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ブランディングとは?正しい意味や事例をわかりやすく解説

投稿日:2021年9月15日 | 最終更新日:2024年1月31日

「ブランディング」という言葉を耳にしたことはあっても、その意味や手法について深く理解している人はあまり多くないというのが現実です。

「ブランディング」とは今や大手の企業だけが取り組むべきことではなくなりました。ブランディングの必要性や、ブランディングすることによって生まれるメリット、仮に行わなかった場合にどのようなことが起こるのか?を考えることで、改めてその重要性を理解しておきましょう。

漠然と取り組むことや、施策の根幹であるものがブレてしまえば「ブランディング」の成功には繋がりづらいもの。

ここでは基本的な言葉の意味から、戦略の立て方などについてまで一通り基本的な部分を紹介していきます。

まずは「ブランディング」という言葉の意味について

「ブランディング」という言葉は「Brand + ing」という構成からもわかるように「ブランド」を形成・確立していくためにおこなう様々な活動を指す言葉です。

「ブランド」という言葉の大元は、昔放牧している家畜に対して「この家畜は私の所有物です」と他者の家畜と差別化し、認識するためにおこなっていた「自作の焼き印をつけること」が語源となっています。

それが現代になり、似通った商品や競合商品との区別をおこない、取引相手や一般消費者に認識してもらうための施策がここに内包されるようになりました。

『ブランド』というものには、商品名・商標・ロゴマーク・パッケージデザイン・サウンドロゴなど多くの要素がここに含まれ、組み合わさることによって形成されています。

これらによって形成された『ブランド』というものを、より広く世の中に認知させることによって、市場のニーズを把握しながら自社商品やサービスの利点や強み、市場における立ち位置をより明確にしていくことが「ブランディング」となります。

消費者が「〇〇といえば、あの商品」「このパッケージは、この商品」「このマークはこの企業の商品」という風に市場やターゲットとなる顧客に浸透させることがブランディングの目的となります。

「ブランディング」はどうして必要なのか?

電車やバスの車内広告、自動販売機やコンビニに陳列されている商品、街角で見かけるショーウィンドウ、テレビコマーシャル、W E B広告などほとんどの人は意識もしてもいませんが、日常生活を送る中、毎日数えきれないほどののブランドを目にしているはずです。

「あなたは、今日何個のブランドを目にしましたか?」と聞かれて、正確な数を答えられる人はおそらく存在しません。私たちが「ブランド」として意識していないだけで、街中にはブランドが溢れています。

店舗の看板や、スーパー・コンビニエンスストアの商品棚に並んでいる商品、自動販売機、自動車のエンブレム、電車の中吊り広告。少し街に出ただけで目にするほぼすべてにブランドがあると言っても過言ではないのです。

現代においては分析を詳細に行った上で、ブランド戦略をしっかりとおこなってはじめて市場において勝負ができる状況であり、ブランディンが必要とされない商品やサービスはほぼ存在しないと考えるべきです。

市場に出ている商品やサービスのほとんどは「ユーザーに企業や商品に対してどのようなイメージを抱いてもらいたいか?」を考え、戦略を立てた上で世に送り出されています。

ブランディングを怠るとどうなるのか?

では、ブランディングを全くしない状態では何が起こるでしょうか?

一番わかりやすいのは「価格競争」でしょう。

例えば、コンビニで売られている緑茶すべてが全く同じボトルで、パッケージデザインにも全く差がなかったとしたら、あなたはどのお茶を選びますか?

仮にバラバラの価格が設定されていたとして、「どれがどのメーカーのお茶なのか?」の認識が全くできなくなった時、購入の上での基準になりがちとなってしまうのは「価格」です。

あまり耳にしたことの無いブランドの商品を買うことに対しては、躊躇う人も多いのが現実。そんな時に勝負するためには「価格」というのが一番わかりやすい顧客に対するアピールポイントになります。

また、小売店側としても「どれだけ売れるのか?」がわかりづらい商品に対しては大量に仕入れることには二の足を踏む店舗も多く、より安い価格で少量仕入れてもし売れるのであれば追加で発注といった具合にあることでしょう。

ブランディングできているのと、そうでないのとでは市場において大きなビハンドが生まれてしまうということは理解しておくべきです。

ブランディングが上手くできていない企業がどのように売上を伸ばしていくのか?を考えたとき、より簡単に顧客を獲得するためにできる施策が「価格を下げること」です。しかしこれには大きなリスクを伴うこととなります。

価格を下げることにより当然「利益率」は下がります。コストの削減を考えた時、プロモーションに費やしている費用なども削る必要が出てくることに。プロモーションにお金を使えなくなれば、新規の顧客獲得が難しくなるという悪循環を生んでしまう可能性も十分考えられます。だからこそ、「ブランディング」を怠ってはいけないのです。

ブランディングにおける具体的な手法と段階

ブランディングの意味はわかっても、どのような計画を立て、具体的なブランディングへと昇華させていくべきか?と頭をなやませることとなるでしょう。まずは、ブランディングの具体的な手段と段階についてご紹介したいと思います。

ブランドの方向性をどうするか?

ブランドが最終的に目指すべき理想像や未来像を「ブランドビジョン」として定めていきます。商品やサービスを送り出すことによって、世の中や個人に対してどのような効果をもたらすことが、ブランドにとってもっとも価値のあることなのか?ということを言語化していく作業になります。

市場において自社を取り巻く環境について分析する

市場に新規参入する場合はもちろん。ブランドリニューアルや、新商品投入などにおいては自社の置かれている現在地を冷静に見つめることが大切です。顧客のニーズに応えながら、イメージや性能・効果など他社と大きく差別化が図れるのはどのような部分か?また、商材を取り巻く業界全体が向かう方向性なども含めて検討と分析を行います。

フレームワークとしては、PEST(政治、経済、社会、技術的要因)分析や3C(顧客の要望、競合他社の状況、自社の強みや弱点)分析、ファイブフォース(顧客側の交渉力、企業側の交渉力、業界内で起こっている競争、新規参入商材・サービスの存在が持つ脅威、代替品が登場し置き換わる脅威)分析などが用いられることが多くなります。

ブランドコンセプトを決定する

「誰」をターゲットとして、「何を感伝えるのか?」ブランディングにおいて重要なのは「Who」「What」を意識するということ。この根本をきちんと考え、戦略を練ることがブランディングにおいて最も欠いてはならない部分でもあります。

「Who」の部分がより明確であればあるほど、自社の商品やサービスにどのような印象「What」を抱いてもらいたいのか?ということもハッキリするため、よりブレの少ないブランディングが可能となります。

また、この二つに加えて「How」=どのように伝えるか?を意識することでマーケティング全体の方向性が固めやすくなるという利点があることも念頭に置いておくべきでしょう。

ブランドアイデンティティの決定

分析の末に、市場における自社の「売り」を見出すことができたら、顧客により愛着を持ってもらえるような「ブランドアイデンティティ」の決定をおこないます。

ブランドアイデンティティとは?詳しい記事はこちら↓

ブランドアイデンティティとは?意味や効果、事例をわかりやすく解説!

フィロソフィー

英語で言うとわかりづらいですが、日本語なら「哲学」と訳せます。「ミッション」「ビジョン」「価値観」の3要素から構成される「ブランド哲学」がフィロソフィーです。

お客様や社会全体に向けどのような価値を創出し、貢献するのかを表すのが「ミッション」。

「ビジョン」はミッションを現実のものとするために具体的な方向性を示します。「価値観」はブランディング全体の行動指針であり、社内全体で共有することでブレの無いブランディングを推し進めるために必要な基準です。

ベネフィット

「機能」「情緒」「自己表現」それぞれのベネフィットがあります。

「機能」は商品が実際に顧客にもたらす機能的な効果のこと 例)「身に着けるだけで腰への負担が軽減される」。
「情緒」は商材がもたらす感情的プラスの効果 例)「使うだけで香りで癒され、幸せな気持ちになるボディーソープ」。

「自己表現」は商品を使うこと、所有することで得られる自己表現の効果例)「高級外車に乗ることは成功者の証」。どのような価値を創出し、提供できるのか?がベネフィットとなります。

属性

商品が持っている特性を指します。客観的かつ定量的な根拠を示すことができる点がこの属性です。

例)パソコンの筐体には100%リサイクルのアルミニウムを使用し、梱包材・緩衝材には再生紙100%を使用。カーボンニュートラルにも意識を置き、日本への輸送の際にはカーボンニュートラルに取り組み10年後50%達成を目標にしています。

といった表現ができれば「SDGs」をしっかりと意識した商品で、それを選んでいる私もそういう属性にあると顧客は感じることができるようになります。

パーソナリティ

ブランドを擬人化した時に、お客様から「どんな人だと思われたいか?」と考えてみましょう。人は人間臭さがあるほうが魅力や愛着を感じやすくなります。

ブランディングによって生まれるメリットとは?

ブランディングの意味や具体的手法、必要性などについてここまで説明してきました。ブランディングするとによって、どのようなメリットがあるのかということを、企業にとってのメリットと、ユーザー側から考えたメリットについて考えていきます。

価格競争からの回避・脱却

「価格競争を回避することができるようになる」

ユーザー・消費者が商品を比較する最もわかりやすい指標とはなんでしょうか?それは価格です。物価が上がれば、少しでも消費額を抑えることができないか?と考えるのが消費者心理。

ブランディングが確立されていない商品に関して言えば、価格と実際に商品を手に取った際に感じる品質などを検討材料とする必要があります。E Cサイトで買い物をする場合には、価格と他のユーザーのレビューなどを参考にすることで購買意思を決定していくのです。

スーパーに並んでいる野菜の中から購入する商品を選ぶときのことを考えてみましょう。品種や価格を検討して、あとは売り場に並んでいる商品の中から、熟れ過ぎていたり、傷がついていたりするものを避けたりするほか、中身が詰まっているか、鮮度が落ちていないかなども購入の際の参考にするはずです。これはあくまでもブランディングできていない状態。

普通の野菜とは少し区切られたスペースに陳列されている「無農薬有機栽培」の野菜だったらどうでしょうか?健康志向や、少しでも体に良いものを摂取したいという意識が働いている人であれば、「普通の野菜」と「無農薬有機栽培野菜」だったら、価格が高くても無農薬有機栽培のものを選ぶはずです。

他の商品との明確な差別化ができており、且つわかりやすいメリットが存在していることは、少しでも安くという価格競争を回避し、適正な価格設定で勝負できることで、より大きな利益を生み出すことへとつながります。

ファンを作り、定期的な購入・利用が生まれる

「定期的に購入・利用してくれる“ファン作り”に繋がる」

まずは新規顧客を獲得することがどんなブランドでも求められます。たまたま割引になっていた商品を購入して使ってみたとしても、その商品が「安かろう、悪かろう」といった粗悪な商品だったとしたら、そのユーザーはもう二度とそのブランドの商品を選ぼうという気は起きないでしょう。

安定した売上を創出し、さらにビジネスを伸ばしていこうとするのであれば、ブランドや商品を「指名買い」で定期的に購入してくれるファンを獲得することが求められます。

必要なのは継続的・定期的に購入してくれるような「ファン」を作ること。ブランディングが成功すれば顧客の中から、商品・サービスにより愛着をもつ「ファン」が生まれることで、リピートをする顧客の割合が増え、安定的な売上を生み出すようになるのです。

ファンによって一定の売上を確保しながら、新たな顧客を開拓し売上を伸ばす意味でも、ブランディングに取り組みましょう。

採用において優秀な人材の確保につながる

「より優秀な人材の獲得と、採用コストの削減を実現できる」

ブランディングはユーザーや顧客の獲得だけに向いているものではなく、企業の知名度や認知度の向上にも大きく影響を与えます。

企業との取引をしようとする際、より有名な企業の方が安心感を抱きやすいという心情は多くの方にあるのではないでしょうか。あまり名前を聞かない企業が提供しているサービスよりは、少しでも見聞きをしたことのある企業の商品であったり、ブランドの方がより有利に働きます。それは一般のユーザーや消費者に限ったことではありません。

就職や転職をしようとする人は、同じような業界で給与の水準や待遇の諸条件が同じようなものであった場合、より有名な会社を選ぶ可能性が高まります。ブランディングが成功している企業であれば、その会社で働くことに憧れを抱く人も出てくるようになるでしょう。

より有名な企業な方が良い企業であったり、将来性が期待できるというわけではありませんが、選ばれやすくなるという点ではブランディングが鍵を握っています。

より優秀な人材を多く集めたいということであれば、求人ページへのアクセス数を伸ばしたり、応募数を伸ばす必要も出てきます。求職者を自然により多く集めることができれば、リクルートサイトへの求人情報掲載など採用にかかるコストも抑えることができるのです。

対求職者という意味でもブランディングの影響は大きいと認識しておきましょう

インナーブランディングとは?詳しい記事はこちら↓

インナーブランディングとは?意味や手法・導入手順について解説!

購入までの意思決定スピードを短縮できる

ブランディングによって、市場や消費者の中で知名度や信頼性が高まることによって購入を検討する時間の短縮をすることができます。

「この会社が出す商品だから」、「このブランドの新しいシリーズだから」といった形で、購入行動までの意思決定で迷う時間が一気に短くなることは消費者にとっても大きなメリットです。

「指名買い」をしてくれる顧客が増えれば、企業にとっても大きなメリットであることは言うまでもありません。

日本人にとって身近なお米で考えてみましょう。日本には「米どころ」と呼ばれる地域が存在し、各地がブランド米を開発し、「コシヒカリ」「ササニシキ」「秋田こまち」「ヒトメボレ」「ゆめぴりか」などが市場でしのぎを削っています。

普段行かないスーパーだったとしてもお米売り場で、これらの銘柄のお米が売られていれば「いつも買っているブランドだから」と安心感を持って、簡単に手を伸ばすことができるはずです。

消費者にとっては、いつも買っているブランド、いつも買っているパッケージ、いつも買っているメーカーならそれは購入する際の検討期間を短縮することにつながります。 仮に新商品だったとしても「このメーカーやブランドなら安心」とユーザーが感じることができるのであれば「試しに買ってみよう」という気分にもなります。

ブランディングはユーザーの意思決定におけるリードタイムの短縮という大きな役割を果たすのです。

身近な事例から考える「ブランディング」

「カップラーメンなら〇〇」、「ブラック・無糖コーヒーなら〇〇」、「100円ショップなら〇〇」などのイメージを抱いてもらったり、「このロゴのコーヒー店は〇〇」、「このペットボトルの形はこの飲料」などの印象を広く消費者やターゲットとなる市場全体に認識・浸透させることでより市場における優位性を獲得することが「ブランディング」の大きな目的でもあります。

ブランド=高級品という安易な考えは間違い

「ブランド」と言われて浮かぶのは多くの人にとって、高級なカバン/時計/洋服などの服飾品だったり、海外製の自動車のことを思い浮かべてしまうということが強い傾向にあると思います。

しかし、このブランドという言葉が本来指しているのは何も高級なものばかりではありません。結果的には、高級ブランドと呼ばれる企業がブランディングに成功を収めているが故、ブランド=高級品というイメージが定着しているという背景があると言えるのです。

安い商品のブランディング例 やおきん「うまい棒」

安い商品でも十分ブランディングに成功している例もたくさんあります。例えば「やおきん」と聞いてどのような企業なのかパッと思い浮かぶ人は少ないかも知れません。しかし、この会社の代表的なヒット商品である「うまい棒」ならどうでしょうか?

ド直球な名前が故にインパクトが多くの人の印象に残る。そして、幼少期に100円玉を握りしめてお菓子を買いに行く際に経験する「あと10円買える」という時に絶妙な商品であり、味のラインナップも豊富。

駄菓子の代表格として君臨し、「安くて美味しい気軽に買えるお菓子」という『ブランド』をうまい棒は確立しているのです。

こう見ても、ブランドが高級なものだけのものではないとお分かりいただけるでしょう。事例として上げたのはBtoCの商品ではありますが、BtoBにおいてもブランディングをおこなうことは非常に重要なことなのです。

企業ブランディング・リブランディング成功事例

先ほども触れましたが、私たちの身の回りはブランディングされた商品に溢れているのです。ここでは、そんなブランディングに成功している商品やサービスなどついて具体的に紹介してみたいと思います。

世界におけるファストフードの王様

ファストフードと聞いて一番に思い浮かべるお店はどこですか?と聞けば多くの人が「マクドナルド」と答えるのではないでしょうか?それだけ愛され、生活に浸透している存在だと言えるハンバーガーチェーンです。日本においても決してそれは例外ではありません。

安く安定した品質の食事を提供してくれるだけではなく、清潔な店内、スマイル0円などスタッフの対応も含めて、ブランディングに成功していると言えるでしょう。

コロナ禍でも売上を伸ばしていることからも、ブランディングによって顧客から選ばれるファストフードになっているということは間違いありません。

芸能人御用達の高級焼肉店

全国で店舗を展開している高級焼肉店は?と聞かれた際には「叙々苑」をイメージする人が多いのではないでしょうか。多くの芸能人が利用し、テレビや映画のロケ弁当などとしても名を馳せています。今では当たり前のように食べられているタン塩をレモン汁で食べる形で提供を始めた発祥の店であるというのも肉好きなら知っているかもしれません。

高品質な肉を提供するだけではなく、ファミリー層や学生が通うような焼肉店とは異なり、店内の装飾なども豪華なものに。接客するスタッフもスーツや和服を着用するなど店全体で高級感を演出することで、他店との差別化に成功しています。

シンプルかつ、ていねいな暮らしに欠かせない商品たち

派手な色味を使わずシンプルなデザインの家具や日用雑貨、洋服などを提供。食品などについても統一感のあるシンプルなパッケージで販売しているのが「無印良品」。

商品を見ただけで「無印っぽい」と思わせるシンプルなデザイン。家具であれば白・グレー・生成りの生地や、ウッド素材などでできているものを、商品パッケージは華美なものではなく、臙脂色と呼ばれる無印良品のシンボルカラーをパッとイメージするのではないかと思います。

ターゲットを絞り込みすぎず、誰にでも手に取りやすいものとすることで「最大公約数的存在であること」が、無印が無印たる所以。例え他社が作って販売している商品だったとしても、シンプルなデザインのものに対して「無印っぽい」というイメージを想起させている時点でもうブランディングに大勝利しています。

コカ・コーラの強いブランド力

ドリンクの持つ炭酸のさわやかさをそのまま表現しているような赤い背景に白い文字のロゴ。「スペンサリアンフォント」という非常に特徴的なフォントを使用していることで誰が見ても「コカ・コーラ」と認識しやすいロゴデザインとなっています。

それまではさまざま衣装を着た姿を描かれていたサンタクロースが、クリスマス時期の広告に起用したサンタクロースの衣装を赤と白にしたことで世界中にサンタクロース=赤・白の衣装というイメージを定着させた一因とも言われるくらい、強烈なブランディングに成功しています。

またコカ・コーラの特徴的でくびれのあるガラス瓶は世界各地や日本においても「立体商標」を取得しているので、瓶を見ただけでコカ・コーラだと認識させることができる非常に強いブランディングに成功した事例と言えるでしょう。

ケンタッキーは経営者ブランディングの最上級

創業者がそのまま企業アイコンになって、世界的に認知されている企業は非常に珍しいかとは思いますが、メガネに白ひげのおじいさんの姿を見れば誰もがあのオリジナルチキンを思い出すはず。けんっタッキーフライドチキンの店頭でおなじみのカーネル・サンダース像は、基本的に日本の店舗にしか存在しないとのことですが、日本人にとっては強烈なブランディングの成功例と言えるでしょう。

シンプルなデザインと機能性が生む唯一無二ブランディング

PCに始まりどれも独創的なデザインを世に送りだしてきたApple社。iPodにはじまったポータブルデバイスにおいてはどれもシンプルなデザインで統一され、直感的な操作性によって世界規模で多数のファンを獲得していきました。スマートフォン市場を創出し、iPhoneシリーズにはじまり、タブレット端末の「iPad」シリーズ、ワイヤレスイヤホン「AirPods」など非常に多くのユーザーから支持をされています。シンプルなデザイン商品の背面に、あのリンゴのロゴがあれば一発でApple製品だと認識できる世界でも有数のブランディングに成功している企業です。

ロゴや特徴的デザインで差別化を図るスポーツメーカーのブランディング

NIKEのスウッシュマークやエアジョーダンブランドのマイケルジョーダンが跳んでいるマーク、アディダスならジャージやシューズにデザインされている「3本ライン」、PUMAならピューマが飛び跳ねている姿を模したロゴといったよう一目でこのメーカーのものだということがわかるようになっている点からもスポーツメーカーのブランディングは徹底されています。

またNIKEの「エアマックス」「エアジョーダン」、アディダスの「スタン・スミス」、コンバースの「チャック・テイラー(オールスター)」など靴のデザインがすでにとそのブランドを象徴するデザインとして認知され、ブランディングとなっているものも存在します。

ワークマンが大成功を収めたリブランディング

元々は作業着や軍手、安全靴などの販売店としてはじまっているワークマン。夏場の炎天下や、冬の極寒、暴風雨など非常に過酷な状況に耐えることが出来る高品質なアイテムが揃っていることで建築、工事現場などで働く人々の支持を集めていました。

その機能性の高さに着目したのが、キャンプ愛好家やバイクの愛好家たち。過酷な環境でも快適に過ごすことができるワークマンのアイテムを自らの趣味に活用しはじめたのです。ワークマンの商品で冬場の防寒対策をしたり、雨天時には撥水処理を施されたウェアを取り入れることでキャンパーやバイカーたちはワークマンに魅了されていきました。

この需要に着目したワークマンは既存の商品をよりバイカーやキャンパーにも使いやすいデザイン性などに改良を行いました。

さらにキャンプを楽しむ女性が増えたこともワークマンに追い風を生み出します。キャンプを楽しむためにワークマンを使いたい女性。しかし、ワークマンの製品は男性がコアターゲットであったため女性に向けたデザインや商品ラインナップには十分ではない状況でした。SNS上でも「ワークマン女子」という言葉も広まり始め、より女性に向けた需要が高まったこともあり、女性向けウェアなどを拡充して新業態店舗も投入し人気を集めています。ワークマンは「作業着店」という既存のブランドだけではなく「キャンプやバイクにも使える高機能ウェア」というプラスアルファのブランディングに成功したのです。

企業努力を重ね、最上の商品やサービスを生み出すことが出来ても広く認知してもらい、市場における正当な評価を受けようとするのであれば、企業にとって「ブランディング」は欠かせないものです。

リブランディングとは?詳しい記事はこちら↓

リブランディングとは?意味や効果、事例をわかりやすく解説!

ブランディングは、必要不可欠ではない?

ブランディングは「絶対にしなくてはならないものなのでしょうか?」と問われれば、答えは「No」です。どの企業もブランディングしなければ生き残ることができないなどということはありません。日本や世界各国においてブランディングに取り組まなくても企業活動が成り立っている会社がほとんどと言えます。

中小企業がブランディングに取り組む理由

では、別に絶対に必要ではない「ブランディング」というものをなぜ行う企業があるのでしょうか?

その理由は単純です。ブランディングが成功すれば、集客や売上のアップにつながる可能性が高いからです。そして、他社や競合商品となるものとの明確な差別化を図ることができれば市場全体において有利なポジションを得ることができるという点にあります。

「ナショナルブランド」と呼ばれるような大企業がおこなっているブランドの展開や、服飾・宝飾系の「ハイブランド」が展開している「ブランディング」が目につくことが多いため、「自分たちには無縁でハードルが高いもの」と感じてしまう中小企業の経営者も多くいらっしゃいます。しかし、本当は中小企業にこそブランディングが必要となります。

それは、競合となる会社や商品・サービスが多数存在していることが大きな理由。

誰もが知るような企業の商品やサービスは、すでに「ブランディング」や市場における「ポジショニング」などすべて済んでいるため、一定のファンの獲得も出来ているためブランディングをそこまで重視しなくてもいい状態です。

逆に、中小企業の場合「お客様に選んでもらうため」に何らかの方法で頭一つ出る必要があるのです。消費者にとって「価格や性能、機能などにおいて大差の無い、似通った商品・サービス」という漠然とした商品の中から「この商品を選んで買いたい」と感じさせるためにはブランディングは欠かせません。

各種SNSなど企業側からの発信がより簡単になった現代において、中小企業こそより気軽にブランディングができる時代となっています。中小という企業規模だからこそ明確なブランディング戦略を立て、理念やビジョンを社内で共有しながらブランディングをはじめていくことが可能となります。

「〇〇」といえばこのブランドとなる強み

ブランディングによって例えば「好記録を生み出すランニングシューズなら〇〇」「写真がキレイに撮れるスマートフォンは〇〇」など、ユーザーの潜在意識にまで広く浸透していれば、それだけで集客や売上の効果は大きなものに。ブランディングが成功すれば、広告費の節減にもつながることでしょう。

広告宣伝費を大きく節減できるような効果が上げられれば、本来であれば膨大に広告に投下しているはずのお金を新商品の開発に投資し、商品の価値を向上させることができます。

ブランディングの際に考えるべき競合と環境

ブランディングをおこなうにはそれなりの資金が必要になります。市場に抜きん出た商品やサービスが無い場合には難易度はそこまで高く無いかもしれません。しかし、市場を牽引するような代表的な企業は商品・サービスがある市場に新たに進出し、シェアや顧客を獲得しようとする場合のブランディングは非常にハードルが高いものとなります。

わかりやすく市場のトップランナーと渡り合える武器(革新的な技術、価格など)が無ければ、顧客からの評価・支持を獲得し、ターゲット市場の状況を根底からひっくり返すようなことはブランディングだけではなかなか難しいことも予想されます。

自社が挑む市場の状況などをよく考え、有利に運ぶことが出来る可能性が高い市場であるのなら積極的にブランディングに取り組むのも良い選択かも知れません。

アウターブランディングとは?詳しい記事はこちら↓

アウターブランディングとは?意味やインナーブランディングとの違いについて解説!

何をすることがブランディングなのか?

では、ブランディングに取り組む場合具体的に何をすればいいのか?について考えてみます。

冒頭でも触れましたが「ブランド」を形成・確立していくためにおこなうさまざまな活動を指す言葉が「ブランディング」ということからもわかるように「ブランディングとは、このことだけを指す」特定のものはありません。

「考え方」や「概念」に近いものであり、広告の制作や宣伝の打ち出し方、マーケティングなどにおいてベースとなるものが「ブランディング」となります。

「自分たちが提供する商品/サービスがどのような価値を持ち、顧客に提供できるのか?」を考えた上で、より正確なブランドの価値として顧客やターゲットとなる市場に伝えていくための施策を組み合わせて展開していくのです。

高級な万年筆の広告を作成しようとした際、滑らかな書き心地や、使われている素材、長く使うことができる一生モノである点をアピールするような訴求はブランディングに沿ったものになるかと思います。より高級感を演出することが求められるものについて「コスパ」のような安さを連想させる言葉は間違っても使うべきではないでしょう。

ブランディングの手法・手順とは?詳しい記事はこちら↓

ブランディングの手法・手順とは?フレームワークを紹介!

WEBを利用したブランディングについて

リスティングやディスプレイ、各種SNS広告などの運用によって、広告費用をかけブランディングの展開が可能です。各種バナーやランディングページ、コーポレートサイトなどにおいて画像・動画のビジュアルや、キャッチコピーはよりブランドのイメージに即したトーンで展開することになります。

また、多くの企業が自社のサイトを持ち、さまざまなSNSにアカウントを開設している時代において、直接顧客に対するアプローチもできるようになってきました。

特にSNSの公式アカウントであればより身近に感じるユーザーも多いため、SNS運用の担当者がよりフランクな投稿をしてしまう傾向も。しかし、特に高級感を打ち出そうとする場合には、これがブランドイメージを崩してしまう可能性も考えられます。

情報の発信が容易だったり、拡散されやすいメディアであるが故、よりフランクな投稿が好まれる傾向にあるのは事実ですが、ブランディングのトーンから逸脱し過ぎることが無いようにSNS運用マニュアル等を整備しておくことも重要です。

中小企業が取り組みやすいSNSによるブランディングとは?

Twitter、Instagram、TikTokなど気軽に始めることができるSNSであれば、中小企業が取り組みやすくブランディングにも繋がりやすいものです。それぞれどのような施策があるか紹介していきます。

親しみを持たれやすい X(旧Twitter)

中小企業だけではなく、大企業もブランディングの一環として取り組んでいるのが「X(旧Twitter)の中の人」。顔は見えずとも日常的なことをつぶやいてみたり、自社が過去にした失敗を自嘲気味に披露してみたり、流行りのハッシュタグに乗ってみるなどとさまざまな企業が公式ツイッターの「中の人」をブランディングの一部として利用しています。

また、競合他社やジャンルを超えた他のメーカーの「中の人」とのX(旧Twitter)上での交流によってコラボレーションが生まれることも。

敢えて「中の人」のキャラクターや、パーソナルな部分を打ち出すことによってユーザーとの近い距離感を醸成できるのがX(旧Twitter)をブランディングに使う利点です。

商品の機能や使い方などについてユーザーから飛んでくる質問に対して返信することで、ブランディングとWEBカスタマーセンターの役割も担うことができるのも一つのポイントになります。

パーソナルブランディングとは?詳しい記事はこちら

パーソナルブランディングの意味とは?個人をブランド化する方法を解説

写真だけで勝負できるInstagram

SNSでも写真がメインになるInstagramであれば、いわゆる「映える」写真を提供することができればそれをきっかけに多くの方に知ってもらえる可能性があります。文才は無くても、アイディア一つで大きな効果を生むことができるのがInstagram。

例えば地方の寒村と思われているような地域の観光協会がInstagramのアカウントでどのような発信ができるでしょうか?

都会のオシャレなカフェなら人気のスイーツやラテアートなどを載せたり、高級路線のホテルを運営している会社であればラグジュアリーな雰囲気の客室やラウンジの映えを狙うことができるかも知れません。

売りになる名産品がなかなか無い、観光名所と呼べる場所も思い浮かばない。そんな状況でもInstagramなら「画力(えぢから)=そのもの・場所・瞬間が持つ美しさ、面白さ、興味深さ」を切り取ることができれば1枚の写真で大きな反響を生み出し、効果的なブランディングにつなげることができます。

地元の人にとっては何気ない風景でも、雲海で『日本のマチュピチュ』と称され人気を博している兵庫の竹田城跡や、北海道の摩周湖から地下水が湧き出て不思議なエメラルドブルーに輝く池となった北海道の「神の子池」など魅力的な写真が撮影できるスポットがあればそれをきっかけにバズることが可能なのです。

中小企業におけるInstagramを利用したブランディングでもそれは変わりません。

・デザインにこだわり抜いたハンドメイドの一点モノ家具
・メガ盛りテラ盛りを超えた「ペタ盛りランチ」
・どんな飲み物を入れてもキレイに輝くレインボーグラス

映えを意識した商品づくりがされていれば商品の購買や認知拡大に有効なInstagramの使い方はできます。

なかなか自社の商品は「映えない」と思っているものでも、それを逆手にとって「いかに自社の商品は映えないのか?」という見せ方も可能なはずです。

・どれだけオシャレな背景にしても絶望的に映えないうちのせんべい。でも味は最高だからロングセラー
・暖かさはどのメーカーにも負けない服!映えはしないけど
・当館は富士山から最も近い場所にある温泉宿です。でも、近すぎて都連プロから見えるのはただの森。日本一映えない富士山の写真が撮れます

意外性でバズるTikTok

中小企業でブランディングにTikTokを利用している企業は多くなく、食品や服飾などの大手メーカーが積極的に公式アカウントを活用しているという状況です。敢えて競合が少ないSNSに取り組むことで他社との大きな差別化を図るという戦略もあるでしょう。また、利用者は若年層が中心となっているので、より若いユーザーに向けたアピールをしたい場合には向いているSNSのブランディングです。

また、中小企業の認知向上に利用するにはTikTokとの意外な組み合わせというのも一つのカギです。「タクシー会社の公式TikTokでドライバーのおじさんたちが、頑張ってダンスを踊っている」といった動画がTikTokでバズったこともありました。直接売上の大幅アップにつながることでは無いかも知れませんが、話題を呼びテレビなどのメディアが取り上げることによって知名度・認知の向上というブランディンにはつながっている成功例と言えるでしょう。

 SNSを活用したブランディングにおける注意すべきこと

ソーシャルネットワーキングサービスをブランディングに使うことにおいて最も注意が必要なのは「炎上」や「誤爆」といったリスクがあることです。

SNSの特性の良い点でもありますが、簡単に始められるが故にすでに個人のアカウントを保有している社員も多いため、ログインするアカウントを誤る可能性ももちろんあります。

・会社の公式アカウントへのアクセスは、会社から支給している端末に限る
・個人のスマートフォンで撮影した動画や画像を使用する場合には必ず支給端末に転送してから利用する

といった縛りを設け、個人のアカウントときっちりと一線を画すことを意識することによって、個人のアカウントと勘違いして誤爆投稿が起こることは未然に防ぐことはできます。

「炎上」に繋がりやすいのは、ユーザーとの距離感が近いが故に、企業アカウントであることの意識が薄れてしまうことで起こります。何気ない書き込みのひとつが本人の意図しない形に汲み取られ、受け取られ、拡散されてしまった場合には最悪の結果を招きかねません。

良くも悪くも「人」が透けて見えるソーシャルメディアにおいて、決してガチガチに考える必要はありませんが「言葉」の重みを考えながら丁寧に運用していくことを意識しましょう。

ブランディングの際に注意すべき点

ブレずに統一感をもったメッセージを届けることが大切

広告宣伝などを一括して管理する部署がある場合にはなかなか起こりませんが、中小企業などの場合にはチラシや紙媒体を担当する部署と、WEBプロモーションの制作や運用を担当する部署が分かれていることもあります。

そういった環境の場合に注意したいのが、統一感という問題。チラシで打ち出しているものと、WEBで打ち出しているメッセージがブレていた場合、両方目にしたユーザーにはチグハグな印象を与えてしまうかもしれません。

春夏秋冬季節ごとのキャンペーンは違っても、根底に流れるメッセージだけは統一感を持って展開するといった姿勢が必要です。

また、紙メディアとWEBメディアで大きくイメージの異なるメッセージを発信してしまう企業も稀にあります。それは、紙よりも容易に情報を更新することができるWEBの特性であり、良さでもあるのですが、ユーザーから見た際には「一貫性が無い」とネガティブに受け取られる可能性もあるということは理解しておきましょう。

媒体によるブレなどが起こらないよう関係する部署で連携し、統一感のあるメッセージを発信することができるようにしましょう。

競合する他社やブランドに答えを求めるべきではない

プロモーションやブランディングの戦略を立てる際に、競合分析をするのは基本です。成功している他社があれば、それを参考にしたくなるのは当然のこと。しかし、大切にしなくてはいけないのは、企業やブランドの持つ独自性、商品のオリジナリティという根幹部分です。

多少参考にする程度であれば、そこまで害にはならないかもしれませんが、度が過ぎてしまえばそれは「模倣」となります。ブランディングにおいて最も大切なものを見失わないように注意しましょう。

商品やサービスも他社の模倣、ブランディングも模倣すればある程度の売り上げが見込めるかも知れません。しかし、それはあくまでも「代用品」でしかないのです。ユーザーはそう簡単にごまかされる人間ばかりでは無いはずです。商品やサービスだけではなくンブランディングにおいても一度「偽物」や「模倣」といった評価を下されてしまえば、その評価はずっとつきまといます。

自社の商品・サービスにプライドを持ち、オリジナリティを大切にして初めて「ブランディング」につながります。部分的に参考にするという姿勢なら良いですが丸々他社のブランディングを持ってくるようなことでは絶対に成功しないと意識しておきましょう。

ブランディングにおいて大切な「Who」「What」

ブランディングにおいて重要なのは「Who」「What」を意識するということ。

「Who」=誰に対して、「What」=何を伝えたいのか。

この根本をきちんと考え、戦略を練ることがブランディングにおいて最も欠いてはならない部分でもあります。

「Who」の部分がより明確であればあるほど、自社の商品やサービスにどのような印象「What」を抱いてもらいたいのか?ということもハッキリするため、よりブレの少ないブランディングが可能となります。

また、この二つに加えて「How」=どのように伝えるか?を意識することでマーケティング全体の方向性が固めやすくなるという利点があることも念頭に置いておくべきでしょう。

まとめ:立案時の意識がブランディングの成否を左右する

ここまでブランディングの意味や、法について考えてきましたが、重要なことはこれまでに紹介してきたような要点を意識しながら市場、ターゲット、顧客をよく分析した上で、自社の強みや売りとなる部分をいかに効果的に打ち出していくのかをしっかりと意識することにあります。

ブランディングの必要性や重要性を改めて考えてみるとブランディングを怠ることによって生まれる不利益の方が大きいということがわかってくると思います。

コロナ禍で苦戦する業界も多々ありますが、こういった世の中だからこそブランディングによって顧客に認知されている会社とそうでない会社の差は大きくなる可能性も高まります。

これからブランディングに取り組みたい、取り組もうと考える場合には、現状分析や戦略を徹底的に練ることによって、少しでも成功の確率を高めながらブランディングを始めることをおすすめします。

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