投稿日:2024年1月24日 | 最終更新日:2024年10月12日
ブランドアイデンティティとは、企業が顧客や市場に対して発信する「個性」や「価値観」を表現したものです。言い換えれば、企業の「顔」や「人格」とも言えるでしょう。例えば、初対面の人に会ったとき、その人の服装や態度、話し方などからその人の印象を感じ取りますよね。ブランドも同じで、その企業がどのように自社を見せたいか、顧客にどんな印象を与えたいかを形にしたのがブランドアイデンティティです。
この記事では、ブランドアイデンティティの基本的な意味や重要性、効果、さらに成功事例までをわかりやすく解説していきます。企業の成長に欠かせないこの概念を理解し、ブランド戦略を強化していきましょう。
ブランドアイデンティティとは?基本的な意味を解説
ブランドアイデンティティは、企業が顧客や市場に対して「どのように認識してほしいか」「どのような価値を提供するか」を表現するものです。具体的には、ブランドの個性や強みを明確にすることで、他社との差別化を図ります。
ブランドアイデンティティを理解する上で、まず「アイデンティティ」という言葉の意味に触れておく必要があります。アイデンティティ(自己同一性)とは、「自己」と「他者」をどのように区別するかを考える概念で、人々が「自分とは何者なのか?」を探求する時に経験するものです。企業にとっても、自社がどのように他社と違うのかを明確にすることが、ブランドアイデンティティの重要な役割です。
ここから、ブランドアイデンティティを構成する主要な要素について見ていきましょう。これは、次の3つの側面から考えることができます。
1. ブランドの個性や独自性を表現する概念
ブランドアイデンティティは、その企業や商品が持つ独自の特徴や強みを表現します。たとえば、「高級感」「革新性」「親しみやすさ」など、ブランドが持つ個性を際立たせ、競合他社との差別化を図ります。
2. 消費者に対する企業のメッセージや価値観
企業が顧客に伝えたい核心的なメッセージや大切にしている価値観も、ブランドアイデンティティの重要な要素です。たとえば、「環境に配慮した製品づくり」や「最先端の技術革新」といったメッセージを一貫して発信することで、企業の姿勢を明確に示すことができます。
3. ロゴやカラーなど視覚的要素
ブランドアイデンティティには、ロゴ、カラーパレット、パッケージデザイン、ウェブサイトのレイアウトなど、視覚的な要素も含まれます。これらの要素を統合し、一貫性を持って展開することで、ブランドの個性を視覚的に表現することができます。
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ブランド・アイデンティティの構成要素
ブランドアイデンティティを構成する要素は、大きく分けて4つ「フィロソフィー」「ベネフィット」「属性」「パーソナリティ」というものが必要となります。ここからは、それぞれの要素について解説していきます。
フィロソフィー
「フィロソフィー」とは、ブランドアイデンティティの根幹を構成するものであり、「ミッション」「ビジョン」「価値観」からなるものです。
- ミッション:ブランドの果たすべき使命
- ビジョン:中長期的な目標や未来像
- 価値観:ブランド全体の行動指針
これらに基づいて、社員の行動や接客などが行われ、ブランドが目指すべき姿に向かって進んでいきます。
ベネフィット
ベネフィットは「利益」や「恩恵」といった意味を持つ単語ですが、マーケティングやブランディングにおいては「商品を通して顧客が得られる・体験できる良い効果」といった意味で使われます。
ベネフィットには以下の4つがあります。
- 機能的ベネフィット:商品の機能や性能
- 情緒的ベネフィット:商品を使う際に感じる感情的な価値
- 自己表現ベネフィット:商品を通じてどのような自分を表現したいか
- 社会的ベネフィット:他者との関係や社会的評価を向上させる効果
これらのベネフィットをしっかり満たすことで、価格競争に巻き込まれにくくなるという利点もあります。
属性
「属性」とは、ブランドが主張するベネフィットを裏付ける具体的な要素です。
例えば「このブランドは地球環境に配慮している」というブランドベネフィットがあるとすると、それに対してより客観的に示す根拠の部分が「属性」です。
製造しているTシャツの生地には環境配慮された農園で生産しているオーガニックコットンか、ペットボトル再生生地を80%以上使っているといった「属性」が示されれば、購買行動や商品選択における安心感や納得感を与えることにつながり、「後押し」になる要素となります。これにより、顧客はブランドに対して信頼や安心感を抱くことができます。
ブランドパーソナリティ
ブランドパーソナリティとは、ブランドが持つ人間的な特徴を指します。人間の特徴と同じように、ブランドにもより人間的な特徴を持たせていくことでブランドをより身近なものとして捉えてもらうことができるのです。
顧客からこのような人間としてイメージしてもらいたいという視点はもちろん、そのパーソナリティにユーザーが自身を重ねたり、投影したり、共感したりしやすいものか?という点も考慮したパーソナリティづくりの視点も必要です。
ブランドのパーソナリティは、「誠実」「洗練」「刺激」などの5つの要素から成るフレームワークで決定されます。
5つの分類からどれに当てはまるのかを考える「ディメンションフレームワーク」と、顧客像からアプローチをおこなう「アーキタイプフレームワーク」を併用しておこなうことが有効です。
ブランドアイデンティティが重要な理由
ブランドアイデンティティは、ブランド戦略の基盤となる重要な要素です。ブランドの一貫した方向性を保ち、時には方向転換が必要な場合にも軸として機能します。これにより、長期的なブランディングの成功が期待できます。
4つの構成要素の中にもさらに細分化されたものが存在することからもわかるように、非常に緻密に計算をし、戦略を練って実行することが必要であるという点がわかるかと思います。
「ブランドアイデンティティ」という大きな柱を立てておくことで、途中から方針の転換などをしたい場合にも立ち返ることができるベースを持っておくことができるようになります。しっかりと軸となるものがあれば、基本を守りながらトライアンドエラーを繰り返すことで、よりユーザーに共感を生むブランディングやプロモーション戦略の模索などを可能にするのです。それだけの重要性を前提に「ブランドアイデンティティ」を考案するようにしていくことが大切です。
ブランドアイデンティティの効果
ブランドアイデンティティの設定は、以下のように「ブランド」「社員」「顧客」の全てにプラスの効果をもたらします。それぞれにとって、どのような効果があるのか?について見ていきましょう。
ブランド戦略の持続性
短期的な利益にとらわれないブランドは、長期的な視点で成長を遂げます。コロナ禍の状況などにより、広告の効果が薄れる今こそ、ブランド戦略を見直す良い機会です。
思い付きをベースに、小手先だけで作ったブランドアイデンティティでは決して息の長いものにはなりません。3年先や5年先の中長期的な展開を考えながら、具体的にブランドがどのような成長を遂げ、どのような存在として世の中に広く認識してもらいたいか?という点をしっかりと思い描くことがまず重要です。
コロナ禍の状況も手伝って、広告に対するユーザーの反応も鈍くなりがちな状況の中だからこそ、このタイミングでよりブランド戦略に時間をかけきちんと練ることも検討してみてはいかがでしょうか。
社員のモチベーションの向上・職場環境の改善
ブランドアイデンティティは社内にも影響を与え、社員がブランドに対して誇りを持ち、共通の目標に向かって団結する効果があります。
ブランドアイデンティティは対外的なものというイメージが強いものですが、社内にも効果をもたらします。ブランドアイデンティティを通して自社が提供しているサービスや、販売している商品などについてより正確に社員が理解できるようになるというポイントも大きな効果と言えるでしょう。
また、世間に浸透したブランドイメージを構築することができれば「自分もこのブランドを作る一員である」というポジティブな自覚が生まれることによって、会社全体が一つの明確な方向性に進むことができるようになります。
顧客への魅力的なアピール
ブランドアイデンティティを明確にすることで、ブランドの魅力をシンプルかつ印象的に伝え、顧客の心に響くアピールが可能になります。
自社のサービスや商品、ブランドとしての魅力というものがより伝わりやすくするためには、平易でよりユーザーの印象に残りやすい言葉を敢えて選んでブランドアイデンティティとする逆算も必要になる部分ではあります。
ブランドアイデンティティが決定すれば、ブランド名、キャッチコピー、写真、ロゴデザインといった視覚に訴えかけるための仕掛けと、それに基づいたブランディングを加速させることが可能になります。
ブランドアイデンティティを構築する際に考慮すべき要素
強力なブランドアイデンティティを構築するためには、いくつかの重要な要素を慎重に検討し、それらを統合して一貫した設計を行う必要があります。ここでは、特に考慮すべきポイントについて説明します。
ブランドのミッションとビジョン
ブランドアイデンティティの中心に位置するのが、企業の「ミッション(使命)」と「ビジョン(将来像)」です。ミッションは、企業が存在する理由や果たすべき役割を示し、ビジョンは、そのミッションを実現するために目指すべき未来を描きます。たとえば、テスラが掲げる「持続可能なエネルギーへの移行を加速させる」というミッションは、ブランドアイデンティティの基盤となっており、企業全体の方向性を示しています。
こうしたミッションとビジョンが明確になることで、ブランドが発信するメッセージに一貫性が生まれ、従業員の意識を統一するだけでなく、顧客からの共感を得ることも容易になります。
ターゲットとなる顧客層
ブランドアイデンティティを構築する上で、ターゲットとなる顧客層を正確に定義することも欠かせません。年齢や性別、職業、ライフスタイル、さらには価値観など、具体的な顧客像を描くことで、そのニーズに応じたブランドアイデンティティを効果的に設計できます。
たとえば、若者向けのファストファッションブランドと、ビジネスパーソン向けの高級スーツブランドでは、ターゲット層が異なるため、アイデンティティの表現方法も大きく変わります。それぞれの顧客層に最も響くメッセージやビジュアルが、ブランドの成功を左右します。
視覚的デザインやトーン&マナー
ロゴやカラーパレット、タイポグラフィ(書体)、イラストのスタイルなど、視覚的な要素はブランドアイデンティティを視覚的に表現するための重要なツールです。これらのデザイン要素が統一されていることで、ブランドの個性や価値観が瞬時に伝わります。
また、広告やSNSでの発信における「トーン&マナー」も大切です。ブランドがフォーマルで信頼感を与えるのか、カジュアルで親しみやすいのか、一貫したコミュニケーションスタイルを設定することで、ブランドのイメージがさらに強化されます。
競合ブランドとの差別化
効果的なブランドアイデンティティを構築するためには、競合他社との差別化を明確にすることが重要です。自社の強みや独自性を特定し、それを戦略的に強調することで、市場での存在感を高めることができます。
たとえば、コカ・コーラが「幸せや楽しさ」をブランドのテーマにしている一方で、ペプシは「若さや挑戦」を前面に押し出しています。このように、異なるアプローチで差別化することで、それぞれのブランドが持つアイデンティティが際立ちます。
ブランドアイデンティティを強化するための具体的な方法
ブランドアイデンティティを構築し、長期的に強化していくためには、継続的な取り組みが欠かせません。ここでは、ブランドアイデンティティを強化するための具体的な方法をいくつか紹介します。
一貫性のあるメッセージの発信
ブランドアイデンティティを強化する上で、最も重要な要素の一つが「一貫性」です。広告やマーケティングだけでなく、商品開発やカスタマーサービス、さらには企業文化に至るまで、全ての側面で統一されたメッセージを発信することが必要です。
具体的な方法としては、まず「ブランドガイドライン」を作成し、ロゴの使用方法、カラーパレット、フォント、トーン&マナーなどのルールを定めることが有効です。また、従業員がブランドの価値観を理解し、日々の業務に反映できるようにするため、定期的な研修や勉強会も役立ちます。
さらに、テレビCM、SNS、ウェブサイトなど複数のメディアで一貫したメッセージを発信することも重要です。こうした一貫性を持つことで、消費者に強く印象づけられ、ブランドの認知度と信頼感を高めることができます。
消費者のフィードバックを反映させる
ブランドアイデンティティは、消費者の期待や価値観と共鳴することで強化されます。そのため、消費者の声に耳を傾け、フィードバックを取り入れることが大切です。定期的に顧客満足度調査を行い、ブランドに対する印象を把握することで、消費者のニーズに合わせた改善を行うことができます。
また、SNSでの反応やレビューサイトの評価など、消費者の「生の声」を集める「ソーシャルリスニング」も有効です。こうして得られたフィードバックをもとに、製品開発やサービスの向上に役立てることで、ブランドと消費者の間に強い信頼関係が築かれます。
SNSや広告でブランドストーリーを伝える
現代では、SNSや広告はブランドアイデンティティを伝えるための強力なツールです。これらのプラットフォームを活用して、企業のストーリーや価値観を伝えることで、消費者との感情的なつながりを築くことができます。
たとえば、InstagramやFacebookなどの視覚的なプラットフォームを活用して、ブランドの世界観を写真や動画で表現する「ビジュアルストーリーテリング」が効果的です。また、消費者が投稿したコンテンツをシェアすることで、リアルな顧客体験を共有し、信頼性を高めることができます。インフルエンサーとの協力も有効な手段で、ブランドの価値観に合った人物を通じて、より広い層にメッセージを伝えることができます。
SNSや広告を通じて魅力的なブランドストーリーを発信し続けることで、消費者に強い印象を与え、ブランドロイヤリティの向上に繋げることができます。
このように、ブランドアイデンティティを継続的に強化するためには、一貫性を保ち、消費者の声を反映し、適切なメディアを活用してブランドのストーリーを伝えることが重要です。これらの方法を組み合わせて実践することで、ブランドの存在感を強化し、競争力を高めることができます。
ブランドアイデンティティまとめ
ここまで見てきたように、ブランドアイデンティティは、息の長いブランドを作り、顧客から愛される存在となるために必要不可欠な要素です。ブランドとしての「軸」をしっかりと作り上げることで、他社との明確な差別化が図られ、競争力が強化されます。
また、ブランドアイデンティティを広く認知させ、これまで接点のなかったユーザーにもアプローチするためには、コンテンツマーケティングが非常に効果的です。質の高いコンテンツを通じて、ブランドの価値やストーリーを伝えることで、新たなファン層を獲得し、ブランドアイデンティティの強化に繋がります。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割