投稿日:2022年4月22日 | 最終更新日:2024年10月9日
デジタル化の進展により、企業の情報発信は多様化し、その質が求められるようになりました。
校正(こうせい)と校閲(こうえつ)はセットで語られることが多く、混同しがちです。企業が発信する情報に誤りがあれば、信頼性にも関わるため、さまざまな企業において校正・校閲の需要が高まっているのです。
今回は、校正と校閲の違いと押さえておくべきポイントについてご紹介します。
校正と校閲の意味とは
校正とは、文書や印刷物が原稿の内容に誤りがないかを確認し、誤字脱字や文法的な誤りを修正する作業です。つまり、既に完成したテキストが正確であるかどうかを精査します。
これに対して校閲は、文章の論理的な矛盾や不自然な表現を改善し、より読みやすく、論理的な構成に仕上げる編集作業です。文章全体の流れを見直し、言い回しの適切さや整合性に重点を置いて進めます。
校正の意味とは
校正とは、主に文章の形式的な側面を確認し、誤りを修正する作業です。具体的には以下の点に注目します。
- 誤字脱字の修正
- 句読点の適切な使用
- 文字サイズや行間の調整
- 表記の統一(例:「ウェブ」と「ウエブ」の使い分け
校正の目的は、読者が文章をスムーズに読み進められるように、形式的な部分を整えることです。言わば、文章の「見た目」をきれいに仕上げる作業と言えるでしょう。
校閲の意味とは?
一方、校閲は文章の内容を精査し、より正確で信頼性の高い情報を提供するための作業です。具体的には以下の点に注目します。
- 事実関係の確認
- 論理的な矛盾がないかのチェック
- 適切な表現の使用確認
- 著作権に関する問題の有無
校閲の目的は、文章の内容が正確であり、信頼できるものであるかを確認することにあります。校正が「見た目」の整理であるのに対し、校閲は「内容」を磨く作業だと捉えるとわかりやすいでしょう。
まず押さえておくべき「校正」と「校閲」の違い
校正と校閲はしばしばセットで語られ、混同されがちですが、それぞれ異なる役割を持っています。両者は「文章や文字の誤りを探す」という共通点はありますが、校正は主に誤字・脱字や文法的な間違いを見つけて修正する作業です。つまり、校正は文章の正確性に焦点を当てています。
一方、校閲は事実確認や論理的な整合性をチェックする作業であり、内容の正しさに関するより深い部分まで踏み込んで確認します。具体的には、商品の価格や発売日などの正確な情報を確認し、誤った事実が含まれていないかを検証することが校閲の中心です。
校正と校閲の効果とメリット
高品質な文章を制作するためには、校正と校閲の工程が欠かせません。これらのプロセスは、文章の正確性を保証し、読みやすさを向上させるだけでなく、読者に対してプロフェッショナルな印象を与える重要な役割を果たします。
校正は、主に誤字脱字や文法ミス、句読点の不備など、文章の形式的なエラーを修正することに重きを置きます。これにより、読者が文章を読み進める際の障害を取り除き、スムーズに理解できるようにします。
一方で、校閲は文章の内容に焦点を当て、論理的な流れや整合性に注目します。文章全体が一貫しており、誤った情報や不自然な表現がないことを確認することで、文章が意図した通りに読者に伝わるように調整します。
また、これらの作業を外部の専門家に委ねることで、新たな視点や提案を得ることができ、文章の品質がさらに向上することが期待されます。
校正の具体的な作業内容とその重要性
校正では、以下の具体的な作業を通じて文章の形式的な正確さを確保します。
- 誤字脱字や表記揺れの修正
誤字脱字は読者に不信感を与えるだけでなく、文章全体の信頼性を損なう可能性があります。例えば、「必要」を「必用」と誤って書いていたり、「イノベーション」と「イノヴェーション」が混在していると、読者に違和感を与えることがあります。こうしたミスを校正で修正することで、文章の正確さが保たれます。 - 統一ルールに基づく表記の統一
表記の統一は、文章の一貫性を維持するために重要です。例えば、西暦と和暦の使い分け、漢数字とアラビア数字の選択、または外来語の表記の統一(「Web」か「ウェブ」か)など、事前に定めたルールに従って統一することが求められます。 - 印刷物における正確性の確保
印刷物では、レイアウトや組版のミスが内容の理解を妨げることがあります。例えば、ページ番号の連続性や目次と本文の一致、写真やイラストのキャプションの正確さなどが重要です。これらの細部まで確認することで、読みやすい印刷物が完成します。
校閲の具体的な作業内容とその重要性
校閲では、内容の正確さと整合性を確保するために以下の点をチェックします。
- 事実関係の確認
校閲の重要な役割の一つは、文章内で言及されている事実が正確かどうかを確認することです。例えば、歴史的な出来事の日付、統計データの出典、人名や組織名の正確さなどを確認し、誤りがないかを検証します。特に、ビジネスやニュース、学術的な文章では、この確認が欠かせません。 - 文脈や内容の矛盾をチェックする
文章が一貫して論理的であることを確認するのも校閲の重要な役割です。冒頭の主張と結論が一致しているか、段落間のつながりが自然か、また使用する用語の定義が一貫しているかなどを確認することで、読者が文章をスムーズに理解できるようにします。 - 専門用語や引用の正確性を確認する
専門的な内容を扱う文章では、用語や引用の正確さが特に重要です。専門用語が正しく使われているか、引用元の意図を正確に反映しているか、出典が正確に記載されているかなどを丁寧にチェックし、文章の信頼性を高めます。
校正/校閲需要の高まりについて
「校正や校閲は紙メディアのもの」というのが基本でしたが、現在は映像メディアでもWEBメディアにおいても必要とされています。どの様な場面で必要とされているのか具体的に見ていきましょう。
簡単に修正できないからこそ重要だった紙メディアの校正・校閲
当初、校正や校閲の作業を必要としていたのは、新聞・雑誌・書籍などの紙メディアが中心となっていました。紙メディアは一度印刷機を回してしまえば、簡単に止めることはできません。そして、印刷してしまったら、増刷や版が異なるものを印刷するまで修正ができないためより慎重になる必要があったのです。
新聞や雑誌・書籍の出版を行う会社には校正・校閲の専門の部署が設けられ、原稿の作成、編集を経て、印刷前に複数回の校正・校閲を通して初めて印刷に回されるというのが通常でした。
映像メディアでも高まった校正・校閲の需要
以前は手書きで作られていたテレビ番組のフリップやテロップはパソコンによってより簡単に文字付けをすることができるようになったことによって、映像分野においても誤字の確認や事実確認なども必要になっていると言える状況です。テレビなどのマスメディアでも特に編集から放送までの時間が短いワイドショーやニュース、情報番組などでも誤字は発生しています。YouTubeなどの動画メディアの場合には個人が発信できるためそもそも校正や校閲という意識を持っている発信者が多いわけではありません。人気YouTuberと呼ばれる存在でもまだまだ誤字などは多く、比較的校正・校閲に対する意識がそこまで高く無いと言えるでしょう。
企業のオウンドメディアにおける校正・校閲は必要か?
インターネットの登場によりさまざまな企業が自社メディアを持つことが可能になりました。それは、自社の公式サイトだけではなく、ブログメディアや公式SNSのアカウントも含めて多岐に渡っています。
「文字を使って発信する」という性質上、誤字の確認や事実確認が必要になると考えるのが当然ですし、個人で発信するのではなく、一企業が消費者やユーザーに対して発信する情報には可能な限り間違ったものが含まれていない方が理想です。
もちろん紙による出版などよりは修正・削除などが簡単なものではありますが、「後からでも直せるから」という前提のスタンスで発信すると決していい結果は生まれないでしょう。また、WEBメディアにおける原稿の執筆を外部に依頼している場合などにおいてはより慎重になる必要があります。
専門の部署を設けたり、専門の会社に依頼して校正・校閲までする必要性はそこまで高くありませんが、オウンドメディアで情報発信をする担当者は校正・校閲の視点を持っておくことが重要かもしれません。
校正/校閲するにあたって押さえておきたいこと
自社内でオウンドメディアに対して専門性の高い校正・校閲を行う際に、担当者が押さえておくと便利なポイントがいくつか存在します。これらを念頭に置きながら作業を進めていくと、よりスムーズに校正・校閲を行うことが出来るのでご紹介します。
【校正ポイント①】記載されている数字に対してはより慎重に
価格、日付、分析データなど数字が関わるものは特に間違いがあってはならないものが多いと思われます。意図せずキーボードの隣のボタンに触れてしまっていたり、「0」のキー入力が多く認識されていればそれだけで1桁数字が異なるという状況が簡単に起こってしまいます。
分析データ的なものとは異なりますが、電話番号やFAX番号などにも注意を払いましょう。これらも数字が一つ違っただけで大きく迷惑をかける可能性があります。掲載番号に実際にコールして確認するといった方法を取ることも大切です。
「数字の誤りには掲載しているデータの信頼性を著しく低下させる可能性がある」という点は押さえながら文書作成、校正・校閲に臨むことが求められます。
【校正ポイント②】商品名・人名・地名などは正しいか?
間違った内容が記載されていると記載内容に対して悪い印象を与えてしまうことが考えられるのは商品名や人名、地名といった固有名詞です。
社名が一般的な表記と異なる企業名などは特に注意したい部分となります。有名なものとしては「キャノン」ではなく「キヤノン」だったり、「富士フィルム」ではなく「富士フイルム」などがあります。社名や商材が英語表記かつ大文字と小文字が混在しているといったものにも注意しましょう。特に頭文字が小文字という表記の場合にはWordなどのソフト側で文頭が大文字にされてしまうといった仕様にも気を付けるべきポイントです。
人名でも例えば「たけしさん」という方の名前、本当は「武」という表記が正しいはずが「剛」や「健」「毅」などと誤字している可能性も考えられます。最初に登場した段階では正しい表記だったにも関わらず、2度目に登場した際には誤字になっていることも考えられますので人名などには特に注意を払いましょう。
【校正ポイント③】表記の「ゆれ」に気を付ける
同じ内容が書かれているはずなのに、送り仮名が違ったり、一方は漢字を含む表記で他方ではすべてひらがな表記となるような現象が「表記ゆれ」。一人で記事を執筆する際にも起こりますが、特に複数の方が記事を執筆する際には注意が必要となります。頻出単語・頻出表現に対して「表記ルール」をあらかじめ設けておくと表記ゆれの対策に有効です。
表記ルールとして有名なものとしては、新聞や雑誌記者が基準としている「記者ハンドブック」といった辞書のようなものも存在します。
また、Wordなどにある「校閲」機能には表記ゆれを検出し、表記統一する機能もありますので、チェックの時間を短縮する意味でも活用することがおすすめです。
【校正ポイント④】あえて、少し時間を置く
文章を書いた直後に自ら校正や校閲をしてしまうと、どうしても「書き手」としての目線から抜けきれない状況に陥ります。特に書いた記憶が新鮮で明瞭な状態であればあるほど、文章に対しての疑問を抱きにくくなるため、少し時間を置いてから校正に取り掛かることできっちりと読者としての目線から校閲に臨むことができます。
【校正ポイント⑤】プリントアウトしてみる
カタログやパンフレットの紙メディアの場合特に有効なのが、実際にプリントアウトしてみるということ。印刷前の段階で実際のサイズで印刷してみて、手に取ってみることで改めて見えてくるものもあります。Wordの入力画面で見ている文章と、実際にデザインが施された状態で見る文章では印象も異なるため、この段階で改めて校正するのは非常に有効な校正方法であると言えます。
【校閲ポイント①】掲載内容は本当に事実かを疑う目も必要
オウンドメディアに意図的に大胆な嘘や、著しく真実と異なるものを載せる企業はほぼありません。しかし、誤った認識や執筆者の勘違いで事実と異なる内容が文章に含まれる可能性は、人が関わっている以上完全に排除することはできないと言えるでしょう。サイトやSNSに事実と異なるものが掲載されてしまってはユーザーの信頼を失うことにもなりかねません。
常識的に間違っていることで無ければ、すべてに対して事実確認する必要はありません。しかし、疑わしい点や気になる部分がある場合には、校閲段階できちんと「ファクトチェック(事実確認)」をする目を持つことがより質の高いオウンドメディア作りへとつながっていくのです。
【校閲ポイント②】校閲の根拠としてのWikipediaの危険性
近年は検索上位に表示される場合も多い「Wikipedia」。詳しく情報が記載されているため、信頼のおける情報ソースだと考えてしまいがちな人も多いのは事実です。文章を書く際にも参考にされることも多いというのが実情でしょう。
しかし、この考え方は校閲をする視点から考える際は非常に危険です。それはWikipedia「がボランティアの共同執筆によるWEB百科事典」という立ち位置であることにあります。
不特定多数の人間が自由に執筆、編集、修正できてしまうというものを情報の根拠にすることはその正確性に対する疑問符が付くということです。もちろん善意のボランティアによって正確な情報が記載されている項目も非常に多いものではありますが、悪意をもって情報操作することもできてしまう。参考にするという点では便利なメディアですが、特に重要な内容について最終的な事実確認の根拠とするものは、自ら別のソースでダブルチェックし、根拠を補強することが重要です。
【校閲ポイント③】専門家や信頼できるソースの確認を怠らない
校閲の作業では、特に専門分野や技術的なトピックに関して、信頼性の高い情報源や専門家の意見に基づいて内容を確認することが不可欠です。
例えば、学術論文、政府機関の公式データ、信頼できるメディア、あるいは業界の専門家から得た情報を参考にすることで、文章の正確性を担保できます。特に医療や法律、経済などの領域では、誤情報が重大な影響を及ぼす可能性があるため、慎重な確認が必要です。
また、一般的な知識や通説であっても、定期的なアップデートや新しい研究結果を反映することが大切です。信頼できるソースを活用し、慎重に事実確認を行うことで、読者に対して信頼性の高い情報を提供できるでしょう。
【校閲ポイント④】AIツールを活用して参照元情報を特定する
近年、PerplexityやGensparkといったAIツールは、文章内の情報のソース元となるURLを提示してくれるなど、校閲作業において有用なサポートを提供しています。これにより、文章内の事実関係やデータの出典を迅速に確認でき、修正作業の効率化が図れます。特に、膨大な情報を扱う場面では、これらのツールが作業をスムーズに進める手助けとなります。
ただし、ツールによる提案をそのまま受け入れるのではなく、最終的な判断は常に人間が行うことが重要です。AIツールの提示する情報に対しても批判的な視点を持ち、自らが確認・検討した上で判断することが、正確で信頼性の高い文章を作成する鍵となります。
文章の修正のポイントと注意点
文章を修正する際は、細部にまで目を通し、読み手の視点を常に意識することが大切です。校正作業では、伝えたい内容が誤解されないよう、文体や語彙の整合性に注意を払います。また、専門用語の使用には特に注意が必要で、専門知識がない読者でも理解できるよう配慮することが求められます。
校閲では、文章全体の構成を見直し、必要ならば段落の追加や文章の削除を行い、より良い内容の流れを作り出すことも重要です。このとき、原稿の目的やターゲットとなる読者層を常に念頭に置くことで、メッセージが的確に伝わるよう努めましょう。
校正と校閲を組み合わせた効果的な方法
文章修正のプロセスでは、初めに校正を行い、その後校閲を実施するのが効率的です。まず、誤字脱字や表記の統一など形式的な部分を整え、その後に内容の正確性や論理的な整合性をチェックする順序で進めると、表面的なエラーを取り除いた後にじっくりと文章全体を見直すことができます。
また、校正・校閲を行う際には、チェックリストを活用することも有効です。校正では、誤字脱字や表記の統一、句読点の適切な使用を確認し、校閲では事実関係や論理的な矛盾、引用の適切さを重点的にチェックしましょう。これにより、効率的に修正作業を進められます。
校正/校閲まとめ
校正や校閲は、「誤った情報を発信しない」という点においては企業サイトやSNSなどにおいても取り組むべきものであるとおわかりいただけたかと思います。
公式SNSなどで発信する情報に関してはガチガチに表記ルールを決める必要性はそこまで高いものではありません。しかし、「オウンドメディアで提供するコンテンツの質を向上する」という点おいては、各企業でも情報発信の場面の際には意識して取り組むべきポイントです。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割