投稿日:2021年8月27日 | 最終更新日:2024年1月10日
マーケティングにおいて、抱く感情や行動を顧客目線に立って考えることによって見えるようになってくるものがあります。それをより分かりやすく形にするものが「カスタマージャーニーマップ」。本稿ではカスタマージャーニーマップを作る意義や、具体的な作り方などについて紹介します。
そもそもカスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニー(Customer Journey)とは、その単語の意味の通り「お客様の旅」という意味になります。商品やサービスのことを知ったお客様が、比較・検討の末に購入にまで至り、購入後にどのような行動に至るのかということを一連の流れとして捉え、それを旅に例えるものを「カスタマージャーニー」と呼びます。
「行動」「思考」「感情」などの面において細分化して分析・シミュレーションをし、マーケティングやプロモーションに役立てるための手法が「カスタマージャーニー」です。
「検索サイトで商品名の検索をおこなう」「価格比較サイトでより安い販売サイトを探す」「ECサイトで商品ページへアクセスする」「買い物かごに商品を入れる」といった、商品の購入につながりやすい行動は「接点」として想像しやすいかもしれません。しかし、表面にわかりやすく出る行動だけをユーザーが紋切型で取っているわけではありません。ユーザーの行動全体を点ではなく、線として捉えることがカスタマージャーニーのポイント。
もちろん、商品やサービスの価格帯や、性質などによって左右される部分も大きいですが、人によっては、商品の購入から検討までの時間が数分から数時間という人もいれば、比較・検討だけで1か月近く費やす人も存在しているのです。
顧客の数だけ存在するカスタマージャーニーすべてを想定することはもちろんできませんが、代表的なターゲットとなるペルソナの行動を考えることは、より適切かつ効果的なマーケティング・プロモーションを展開する上で重要となります。
ペルソナマーケティングについて詳しい記事はこちら↓
『ペルソナマーケティングとは?意味や定義についてわかりやすく解説』
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーの流れの中で、お客様の中に芽生えている感情や、実際に起こす行動、企業側との接点などについて一つの図として表現したものが「カスタマージャーニーマップ」となるのです。
これまでの分析の手法はお客様との接点など、瞬間瞬間の「点」を捉えるものが多かったのに対し、カスタマージャーニーマップは流れに沿って「線」としてお客様の行動・感情など全体を俯瞰で捉えるというのも大きな特徴であると言えるでしょう。
「マップ」と名前がついていることからもおわかりいただけるように、この「地図」があるのと無いのでは大違いです。
ただ目標もなく闇雲に歩き続けていると迷いそうになってしまいますが、カスタマージャーニーマップを丁寧に作りこむことによってプロモーションやブランディングなどにおける方向性に迷いが生じにくくなる効果が見込めます。
カスタマージャーニーマップを作ることがもたらす利点とは?
商品への思い入れや、開発に費やしてきた年月を思ってしまうと、そちらに目線が向いてしまいがちです。そして、それはプロモーションやブランディングにも少なからず影響を与えてしまいます。商品開発や改善、プロモーション、ブランディングなどをする際に重要なのは、知らず知らずのうちに陥ってしまいがちな「企業本位」にならないこと。
企業側は、カスタマージャーニーマップを作ることによって消費者がどのような問題を抱えているのか?、購入に至るまでにどのような点を比較するのか?、自社の商品・サービスにおける強みはどういったところにあるのか?などについてより客観的に捉えることができるようになります。
「カスタマージャーニーマップを作ること」は、企業側にとってどのような利点があるのでしょうか?ここからは、カスタマージャーニーがもたらすメリットについて見ていきたいと思います。
顧客視点に立つことの重要性の再認識と顧客体験の改善
カスタマージャーニーマップを作る際、実際にお客様がどのような行動をしているのか、その際どんな感情を抱いているのかということをより具体的かつ、リアルに考えていくことになります。実際により顧客の心境に近い状況を追体験するため、自社の商品を試してみたりサービスを受けてみたりすることになることもあり得るわけです。
その際、誰しも感じる可能性があるのは「顧客目線」を持ち続けることの大切さ、そしてそれを失うことによって起きるリスクというものも感じるでしょう。
商品やサービスを送り出す側に立ってしまうと、どうしても自社商材に対する愛着から贔屓目が生まれてしまいがちです。大切な商材であればあるほど、厳しい目線を持ち続けることが求められます。そして、それは商品やサービスを提供している当事者の目線ではなくお客様や第三者による視点から、「問題点は無いか?」「改善できる部分は無いか?」ということを常に意識において見ておく必要があるのです。
カスタマージャーにマップを作ることで、実際の商品にフィードバックすることは最終的にお客様の体験「CX(Customer Experience)」の向上にもつながっていきます。CXが向上すれば、自ずと顧客満足度も高まるため、リピートや口コミによる評判の発信・拡散などにもつながるでしょう。
顧客との接点についての検証と改善
現状、自社の商品やサービスを知るきっかけはどこにあるでしょうか?大手企業であれば新商品の発売に合わせて大規模なテレビ・ラジオ・新聞・雑誌などのマスメディアを通して大量の広告を投下するといった戦略もあるでしょう。店頭のPOPやデジタルサイネージを使ったプロモーションもあれば、バナーもあればSNSなどで展開する動画広告など顧客との接点というのは現在も増え続けています。各種SNSが登場したことによって、個人が情報の発信・拡散をし、そこから情報を得て商品を知るといった機会も多くなっているのです。
また新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、顧客との接点そのものが大きく変化しています。接客方法はリモートによるものへと置き換わっていき、外出を控える人が増えたことによってWEBにおける接点などの重要性も増してきています。
「カスタマージャーニーマップ」へとお客様の行動を落とし込むことによって、どのような接点をもっとも重視すべきか?ということが自然とわかるようになり、どの接点に注力すべきかがよりはっきりとするようになります。
改善すべき点を洗い出し、その対応順の見極めに役立つ
カスタマージャーニーマップを作成することによって、商品やサービスにおける課題を掘り越すことが可能です。また、接点などの施策に問題があるとわかれば、その改善に取り組むことできるでしょう。「一連の流れ」として捉えることができるからこそ、、より優先して対応することによって効果を発揮するのはどの部分の施策における改善か?という対応の優先順位付けということも容易になります。
社内で共通認識を持つことに大きな役割を果たす
一つの商品やサービスを世に送り出すには、多くの人が携わることが必要です。商品企画、商品開発、営業、顧客対応担当、接客など部門によって顧客との関りが非常に大きい人もいれば、顧客の声を直接耳にする機会が極端に少ないという人も存在します。
カスタマージャーニーマップによって、顧客の感情や行動というものを「見える化」することは、社内における認識のすり合わせや、問題点の共有などにも非常に役立つものです。
「商品やサービスをより良いものとする」という大きな目標に組織全体として向かうためには、社内における認識のズレは少しでも少なくしておくことが重要です。
共通のペルソナ、ターゲットを設定し「どのような段階にあるのか?」「このターゲットは次にどのような行動を取ると想定されるのか?」といった部分が、よりズレが少ない状態で共有できれば、自ずとチーム全体が適切なアクションを起こすことができるようになります。
コンテンツの企画・運用がおこないやすくなる
「カスタマージャーニーマップ」はコンテンツマーケティングなどにおいても重要な指標となります。「共通認識を持てる」と前述させていただきましたが、複数の担当者がコンテンツの企画や、執筆などを担当する場合にはどうしてもブレが起こる可能性があります。そんな時に、カスタマージャーニーマップを一つの基準とすることで企画や運用を行いやすくなるという利点があります。
「この段階の顧客に向けたコンテンツ」「この顧客の、この課題を解決するために役立つコンテンツ」「比較・検討段階にある顧客の、購入へと背中を押すためのコンテンツ」など明確な設定をして企画やコンテンツの制作にあたることができるので、よりコンテンツ作りがしやすくなるということもカスタマージャーニーマップの大きな役割です。
カスタマージャーニーマップの作り方
ここまで、カスタマージャーニーマップを作ることによって生まれる効果について考えてきました。では、具体的にどのような方法で作るのかを紹介します。
この度の主人公「ペルソナ」の誕生
まずは旅をするお客様の具体的な設定を考えていきます。過去に商品を購入している人の傾向なども参考ししながら非常に具体的な「お客様像」作りあげるのが「ペルソナ」。
どんな人に商品やサービスを知ってもらい、顧客になってもらいたいのか?ということを落とし込みます。
ペルソナの最もベースとなる情報
「年齢、性別、どこに住んでいるのか、家族構成、職業」
ペルソナの内面的な情報
「趣味・嗜好、物事に対する考え方(価値観)、悩みや抱えている問題」
ペルソナがとる行動に関する情報
「行動範囲や、行動のパターン、ライフスタイルなど」
ここで、試しに一人ペルソナを考えてみましょう。
40歳、男性。既婚ではあるが子供はいない。妻と二人暮らし。動物は嫌いじゃないけどアレルギーがあるから飼えないので、もっぱら休日は動物動画をYouTubeで見て癒しと時間つぶしをしている。コロナ禍を契機にしたリモートワークの日々で運動からどんどん遠ざかっている。ズボンを履いたとき、ベルトに乗っかる贅肉は気になるが、食べるのも飲むのも好きだから、なかなか痩せられない。健康診断の結果も気になりはじめたので、いい加減自転車にでも乗ろうと考えている。
非常に冴えない人物像ですが、リアルなペルソナにはなりました。このように具体的な人物像を描けそうな情報があれば、どのような行動で購入にまで至るのかを想像しやすくなります。
もちろん、ペルソナは一人ではありません。実際に、商品を購入するユーザーはさまざまですから、一つの商品やサービスにたいして複数のペルソナを作成し、それぞれのカスタマージャーニーを考えることも大切になります。
ペルソナはどのような行動を取るのか、考えてみる
・商品のことを、テレビを通して「知る」
・商品に対する興味を深め、ネットなどでも情報を収集しはじめる
・競合商品などの情報にも触れ、機能や価格などについて比較・検討をする
・無料で使うことのできるサンプルなどがあれば取り寄せる
・購入を決断し、最終的に購入に至る
・購入した商品についての感想を共有する
商品との出会いから、最終的に購入に至るまでで終わってしまうのはあまり良いカスタマージャーニーとは言えません。実際にCXの向上へとつなげていくためには、購入後どのような行動や感情を抱くのか?という部分についても考えることが大切です。
ペルソナの気持ちを具体的に想像し、折れ線グラフに
行動の流れについて考えたら、それぞれのフェースでユーザーがどんな感情を抱いているか?を考えます。プラスの感情なら、笑顔。マイナスの感情なら、泣き顔。悩んでいるなら困り顔などと顔文字を使ってペルソナの感情を可視化します。感情の浮き沈みを表現するために顔文字を線で繋いで折れ線グラフ化してみましょう。
ここで重要になるのは、徹底的に贔屓目を排除すること。ユーザーが商品を選ぶときに競合商品と自社の商品をフラットな目線で見ています。当然、プラスな感情ばかり抱くわけではありません。冷静かつ客観的な目線で、顧客になりきってその感情をより具体的にそうぞうすることが、より実用的なカスタマージャーニーマップ作りにつながっていきます。
ペルソナの行動の中で生まれる接点についても考える
商品やサービスの認識を起点にして、ユーザーは行動する中でさまざまな「タッチポイント」とも呼ばれる接点を持つことになります。カスタマージャーニーマップには接点も落とし込んでみましょう。
それは、ブランドサイトの閲覧、資料請求、口コミサイトでの評判の確認、大手ECサイトや売り場での価格の比較、売り場に置いてあったカタログやパンフレットなど本人が能動的に情報を得ようとするときに生まれる接点もあれば、ふとした瞬間に目にしたSNSでの評判などさまざまなものが想定できるのです。「タッチポイント」を持った媒体は「チャネル」とも呼び、ペルソナ毎にどのようなタッチポイントがあるのか、どのチャネルにおけるタッチポイントが効果を生んでいるのか?などをカスタマージャーニーマップによって探ることが可能です。
カスタマージャーニーマップまとめ
カスタマージャーニーマップは、よりクオリティを高めることができれば非常に有効なマーケティング分析ツールとなります。客観的な目線から、より具体的かつリアルなカスタマージャーニーマップにすることがおすすめです。WEBマーケティングを実施の際は、今後、増々重要になるでしょう。
参考記事:Webマーケティングとは?行う流れや求められるスキルなども詳しく解説
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割