投稿日:2021年9月3日 | 最終更新日:2024年1月23日
BtoBとBtoC、ターゲットが異なるということは理解している方は多いと思います。しかし、アプローチの方法に明確な違いが存在するということはそこまで強く意識できていないという方はいらっしゃるかと思います。本稿ではそれぞれの意味と、アプローチの手法について考えていこうと思います。
BtoBとは?
「BtoB」や場面によっては「B2B」と表記されますがいずれも「ビートゥービー」が正しい読み方で「Business to Business」の略称となります。
特徴としては、企業対企業の取引となるという点。企業が企業に対して商品やサービスをうることによって成り立つ商売がこれに当たります。
広告代理店などのサービスもBtoBのひとつ。また、一般に流通している商品が店頭に並ぶまでの間にも卸業者と小売業者との商品売買など一部BtoBも含まれているのです。
BtoCとは?
「BtoC」や「B2C」と表記される「ビートゥーシー」。これは「Business to Customer」の略であり、企業と消費者の間でのビジネスということになります。
商品を仕入れ、それを顧客に販売するという意味ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアといったものがこのビジネスのわかりやすいモデルとなるでしょう。
また、近年においてはBtoCからさらに派生した「DtoC(D2C)=ディートゥーシー」という考え方も生まれています。これは「Direct to Customer」というビジネスモデルで、自社のECサイトなどを使うことにより、メーカーが小売店などを挟まず直接顧客へと販売するというビジネスです。Twitter,Facebook,InstagramなどのSNSが広く普及したことによって、企業が直接顧客とつながるハードルが下がったこともこの考え方が出てきた背景と言えるでしょう。
BtoBとBtoCの違いとは?
「BtoB」「BtoC」を比較したとき、企業間の取引か?企業と消費者の間の取引か?という最大の違い以外にはどのような差があるのでしょうか?ここからは、両者の違いについてさまざまな側面から考えてみましょう。
意思決定者が違う
BtoBでは、購入意思を決定する人が必ずビジネスのやり取りをする本人であるとは限りません。法人だと役職を与えられている人や、上長などに稟議を回してからとなるため、自ずと意思決定までの時間がかかります。
BtoCにおいては一般の消費者を対象としたビジネスとなるため、購入意思を決定するのはユーザー本人、またはその家族という狭い範囲になります。商品自体の価格が高額である場合などリード期間が長くなる商材などは一部にはありますが購入意思決定の速度はBtoBと比較した際にはよりスピーディーであると言えるでしょう。
取り扱う商品・サービスが違う
BtoCにおける商品/サービスというのは、ごく一部(不動産や自動車、高級ブランドの商品)などを除けばそのほとんどが低価格帯のものとなります。そして、重要なのはすべてが消費者の手に渡った時点で使用や消費ができる完成品であるということです。
一方、BtoBの場合には商品を作るための原材料を仕入れるという部分なども含まれます。例えばプラスチックの容器を製造しているメーカーがあるとすれば、そのメーカーが容器の原材料として仕入れるプラスチックの素材の売買というのはBtoBの商材ということになります。
同じ商品だとしてもその規模によってBtoB、BtoCは変化します。例えば「スパイス」だとすると、食品メーカーが販売するレトルトのカレーを作る際に使用する大量のスパイスはBtoBとなりますし、キッチンに置くテーブルサイズのスパイスの場合にはBtoCということになるでしょう。ビジネスとしてBtoBは必然的にその規模が大きくなるというのも特徴だり違いの一つでしょう。
購入サイクルが違う
BtoBにおいてはあまり購入サイクルという考え方は強く意識されませんが、基本的に購入サイクルはBtoCと比較すると相対的に長くなる傾向にあります。それは、意思決定者の項目でも触れましたが、大きな会社になればなるほど意思決定のスピードが長くなる傾向にあること、そして購入規模が大きくなることにも関係していると言えるでしょう。一度に多く購入した方がより得なものであれば、一気に仕入れるといったこともBtoBでは起こります。
BtoCにおいては一般的に消耗品と呼ばれるものであれば短ければ数週~長くても数か月といったサイクルで購入されるというパターンが多いでしょう。ブランドチェンジなどが起こるとすれば、消耗品の場合には買い替えのタイミングということになります。
商品の特性によっても購入サイクルというのは変わります。服であればシーズンによって買い替えが起こる可能性もありますが、自動車をコロコロ乗り換える人や、不動産を次々購入して転居を繰り返すという人はまず存在しません。購入サイクルはBtoCにおいても、商品によって大きく左右されるということです。
マーケティング手法が違う
BtoBにおけるマーケティングの対象は企業だからこそ難しい部分があります。既存の顧客だけを相手にしていれば済むわけでは無いため、多くの企業が求める商材やサービスは何か?というポイントを押さえながら、より広い視点をもってマーケティングをおこなうことが求められます。
一方、BtoCの場合はより個人の動向に左右されます。SNSの普及などによって、情報の伝達スピードが格段に向上したことによって、ブームと呼ばれるものは起こりやすい状況にはなってきています。一部は定番として残るものもありますが、短期間にブームが起こったものに関しては、人々の中で消費され、あっという間に飽きられ、消えてしまうものも増えていると言えるでしょう。BtoCにおいてはより時流を捉え、柔軟に変化することも大切です。
BtoB、BtoCそれぞれ営業担当はどのような対応をするのか?
ランディングページや、電話、メールなど顧客からの問い合わせはさまざまなチャンネルが存在しています。
営業担当者は、問い合わせが発生してから商談や見積書などによる提案などを経て最終的に購入や申し込みにいいたるまでさまざまなステップを踏んで顧客とのコミュニケーションをおこない、案件化、顧客化へと落とし込んでいくことになるのです。
BtoB(Business To Business)が企業対企業であるのに対し、BtoC(Business to Customer)の場合には企業対消費者となるため、当然そのアプローチ方法が大きく異なってきます、まずはそれぞれの営業におけるプロセスにどのような違いがあるのかを考えてみます。
BtoBにおける営業プロセスとは
企業間において、商品や原材料などのやりとりを行うビジネスが「BtoB」企業同士の取引であることから一度でも顧客化することができれば、その後複数回に渡って取引を行うといったことに繋がりやすいのが大きな特徴です。BtoBの取引が多くなれば売上の安定化にもつながると考えられます。
BtoB営業プロセスの流れ
問い合わせ → 商談(提案) → 担当者による比較・検討 → 社内稟議による決定 →購買
企業が相手となる営業の場合、問い合わせをしてきた人物が案件や取引に関する決裁権を持っているとは限りません。現場の担当者がさまざまな企業に対して問い合わせをおこない、比較・検討を重ねているというパターンがほとんどです。そういった理由から、商談や提案、コンペなどリード獲得した企業とのやり取りが複数回に及ぶことも非常に多いのもBtoBの特徴と言えるでしょう。
複数の提案機会が与えられる場合、営業担当は顧客のニーズに寄り添いながら、競合他社の商材との比較した際の強みなどをわかりやすくまとめていくことも。商談を通じて、より先方の希望に沿った提案を出来る場合には、通常のメニューを超えて要望を叶えるオーダーメイドの提案をしてみることが重要になります。
BtoCにおける営業プロセスとは
企業と個人の間で商品やサービスを販売するビジネスが「BtoC」となります。街中に溢れているスーパーマーケットや、コンビニエンスストアなどのチェーン店などはすべてBtoCであると言えます。また、実店舗以外のネットショップなど一般ユーザーが利用することのあるサービスのほとんどがBtoC事業であると考えても間違いはありません。
取引の単価がそこまで高くない場合が多いため、どれだけ多くの顧客を獲得し商品を販売することができるか?ということに重きを置く必要があります。
BtoC営業プロセスの流れ
問い合わせ → 商談(提案) → 購買
基本的には、このような流れでBtoCのプロセスは進みます。企業対企業であるBtoBとは違い、社内稟議などは存在しない分シンプルです。
仮に問い合わせをしてきた本人に、決定権などが無い場合でもBtoCにおいてはほとんどが家族・親族などの範囲に限定されることから、比較検討や意思決定までのスピードというのはBtoBよりも短くなる傾向にあります。
「企業対個人」という関係性から、会社自体のネームバリューやブランドの知名度などによって購買の決定が早まるなども考えられます。より名の知れた企業であれば、それだけ安心感を抱きやすくなったり、最初からある程度購入や申し込む前提での問い合わせというパターンも起こり得るのです。実際に商談へと移行する前に、大きく難易度が下がっているという可能性もあるため、BtoCの場合にはブランディング戦略などによってに影響されやすいということも押さえておきましょう。
BtoBとBtoC、営業プロセスにおいて考慮すべき違い
ここまでそれぞれの営業におけるプロセスを紹介してきたことで、ビジネスをする相手が企業か個人かという単純な違いだけではないということはわかっていただけたと思います。担当者がそれぞれの違いとして、営業活動において考えておくべき点はどのようなことでしょうか。
取り扱う商材の価格
まず大きく異なるのはこのポイントです。完成した商品の取引だけではなく、商品を作るための原材料などがBtoBで扱われる場面もしばしばあります。こういった場合には、商品の金額や注文数量なども大きくなり、取引額の規模というのが必然的に大きくなる傾向にあるのは間違いありません。BtoBは複数回交渉を重ねるパターンが存在するため、交渉の中で先方の予算感を探り、より条件に合致した見積や商品を提案することが大切です。
先方の予算が低すぎたり、あまりに条件に合わない商品しか用意ができないと思う場合には、ある程度の段階で交渉を断念することも重要です。
一方BtoCの場合には、商品自体の価格はそこまで高いものは多くありません。単価が低いが故、勢いで購入まで一気に至るということは十分にあります。しかし、BtoCの中でも不動産や自動車、高級腕時計やブランド品など一部の単価が非常に高い商材に関しては例外です。フラっと店に立ち寄って、その時の気分などで購入するといったことはなかなか起こらないものとなりますので、営業担当者のスキルが大きく結果を左右するでしょう。
購入に対する決裁権の所在
BtoBにおいては問い合わせをしてきた人物がそのまま案件に対する業者の選択権や決裁権をもっているという可能性は非常に低いと言えます。中小企業の代表者が直接問い合わせをしている場合などは話が早く進むかもしれませんが、そのような状況は極めてレアケースとなります。
商品の購入や、サービスの導入を現場が希望する場合には、まず社内で稟議を提出し、それに対して直接の上司だけではなく、さらに上席の役員や最終的には社長なども含めた商品を得ることができなければ決裁、契約には至らないのです。
BtoBにおいてはこの「決裁権」を持っているキーパーソンの存在というのが非常に重要となります。同じ会社から同時期に、複数の人間から問い合わせを貰っているといった場合にはより決裁権に近い人物とのパイプを強化していくことが交渉をスムーズに進める上で鍵を握ります。より優秀な営業担当はこの点に関する嗅覚に優れ、交渉を重ねる中でより決裁権に近い人物とのコネクションを作り上げることに長けていると言えます。
では、BtoCの場合はどうか?と言えば、基本的には「購入者=決裁者」である場合がほとんどとなります。営業担当自身が対峙している人物を説得することに成功さえすればそのまま購入まで繋がるというパターンなのです。企業の担当者との交渉とは異なり、購入の意思決定と本人の感情が大きくリンクすることもBtoCでは起こります。「この担当さんの感じがすごくいいから、どうせ買うならこの人から商品を買いたい」などの指名買いのような現象が起こりやすいのもBtoCの特色。商品がデザイン的にカッコいい、この商品を持つことにステータスを感じるといった感情を起点にして、衝動的に購入まで至ることもあるため営業は、購入者の感情を揺さぶるようなアプローチ方法を取ることも有効な手段と言えるでしょう。
購入意思を決定するまでの検討期間
取り扱う商材にもよりますが、BtoBの検討期間は非常に長くなる場合が多いです。長期的な計画に採用する商品の選定などについては、1年近く検討を重ね、さまざまな企業からの提案を聞きながら、徐々にふるいにかけて吟味していくといったパターンも非常に多くなります。ロングスパンでの交渉によって、大きな契約を獲得するためにはしつこくならない程度に担当者との良好な関係性を維持しながら、根気強く長距離走のランナーのような姿勢で交渉を重ねることが大切です。
BtoCの場合には、このリードタイムはBtoBと比較すると大幅に短いものがほとんどとなります。価値観は人によって異なるため、一概には言えない部分ももちろんありますが、コンビニで目にした新商品を衝動的にカゴに入れてしまうような人はそこそこ存在するように、認知から瞬間的に購入の判断に至るというパターンも存在するのがBtoC
の世界なのです。短いものでは数分、低単価の商品であれば長くても1週間程度で購入するか否かを判断する消費者は多いでしょう。
価格の項でも触れましたが、BtoCにおいて例外的に検討期間が長くなるのは、単価の大きい商材(不動産、自動車、ブランド品)が中心です。単価がそこまで高く無い場合にでも、検討期間が長くなる可能性があるものとしては家電製品が挙げられるでしょう。
次々に新しい製品が発売され、競合商品も多数存在、機能の違いや本当にその機能が自分に必要なのか?などを考えた時、型落ちのモデルなども比較検討対象となることが期間を延ばす要因にもなっています。
顧客と対峙する営業担当は、短期間の勝負を多数こなすことが求められるのがBtoCです。
まとめ
BtoBとBtoCそれぞれの特色を押さえた上で、営業をするのと闇雲に営業をおこなうのでは大きく異なります。顧客の傾向や、価格、検討期間などについてもきちんと理解して営業アプローチをすることが売上にもつながるということを意識していくことが重要なのです。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割