投稿日:2022年5月17日 | 最終更新日:2024年10月22日
ペルソナとはラテン語で「仮面」や「人格」を意味する言葉で、マーケティングにおいては、自社の商品やサービスのターゲットを具体的にした「人物像」を指します。この記事では、ペルソナ設定がいかに重要か、その活用方法やメリットについて解説します。
ペルソナとは?
ペルソナは、商材やサービスに対するターゲットとなり得る人物を具体的に描き、その人物に対してどのようにマーケティングを展開するかを検討するために設定されます。例えば、複数のペルソナを設定することで、ターゲットとなる人物の捉え方や嗜好の違いを考慮し、マーケティング施策のブレを最小限に抑えることができます。
具体的には「1980年生まれ、43歳男性、群馬出身。小中高と少年野球と部活で野球に打ち込み、大学進学を機に上京。会社では営業部署で、係長をしている。
町田市に一軒家を購入し、妻と2人の子供と暮らしている。趣味は旅行と音楽鑑賞。食べ歩きも好み、グルメサイトに自らもレビューを投稿している。
年収は530万円。最近の悩みの種は住宅ローンと、子供の教育方針に関する妻との対立。」といったように、本人のバッグボーンなどまでディテールにこだわって作りこまれることもあります。
ペルソナマーケティングとは?
ペルソナは、特定の人物像を詳細に描くことで、その人物が何を求めているのかを明確にし、より精緻なマーケティング戦略を立てるために用いられます。類似した概念として「ターゲット」がありますが、ターゲットはより広範で漠然とした層を指すのに対し、ペルソナは年齢、職業、趣味など具体的な要素を持つ人物像を描きます。
ターゲットの例)
・30代男性(既婚)
・会社員
・小学生の子供がいる
ペルソナの例)
・田中智也(38歳)男性
・妻(35歳)、長男(8歳)、長女(5歳)
・岩手県盛岡市出身、現在は埼玉県草加市在住
・駅徒歩15分の賃貸物件に暮らしている
・大手出版社の編集職を経て、5年前にWEBニュースの編集職に転職
・趣味は学生時代から続けている草サッカー
・妻は出産・育児を経て退職。数年後を目途にアルバイト勤務をしようと考えている
・娘の小学校進学を控え、マイホーム購入を検討中
・愛車は国産のコンパクトハイブリッドカー
・男性用スキンケア商品に興味を持つ
「ターゲット」で商品購入者の傾向や、サイトにアクセスしてくるユーザーの属性などからあくまでも漠然とした「層」を想定して考えるのに対して「ペルソナ」が描くのは具体的な「像」です。年齢、出身地・居住地、職業や趣味・興味関心、具体的な家族構成などまでを落とし込んだ人物像を作れば、その人物ならどのように考えるのか?などより考えやすくなるというのが大きなポイントです。
ペルソナとターゲットの違い
マーケティングにおいて似ているように思われる「ペルソナ」と「ターゲット」ですが、その詳細さが違います。
例えばターゲットの場合「30代未婚男性」「女性の美大生」「男子高校生」といったようなものとなります。年齢や性別、職業など大まかな属性でグループ化し、ターゲットとして絞り込むというのがターゲットとなります。
しかし、時代が進むにつれ個人の趣味嗜好などがより多様化してきたことによって、ターゲットだけでは顧客のニーズの絞り込みなどができなくなったという背景からより具体的な顧客像を設定するマーケティング手法として生まれたのが「ペルソナ」です。
ペルソナマーケティングのメリット
ペルソナを設定することはマーケティング戦略上、どのようなメリットが存在するのでしょうか。
社内での共有が容易になる
ペルソナを作成すると、マーケティング戦略を社内でスムーズに共有できるようになります。共通のペルソナを基に、各メンバーが意見を出し合い、人物像に肉付けをしていくことで、社内の認識のズレを減らし、効果的な議論が進むようになります。
チームそれぞれが「どのような人物なのか?」という点により強く思いを巡らせることによってマーケティングのペルソナに関するメンバー間の齟齬を生まれづらくするだけではなく、ミーティングの機会や工数を低減する効果もあります。
ペルソナというフィルターを通して考えることによって、メンバーそれぞれが持つ主観の排除に繋がるので、より客観的な目線からの裏付けをチームで共有しやすくなるというのも、ペルソナマーケティングの大きな利点となるのです。
ユーザー視点でのマーケティングが可能に
提供者側の視点に偏らず、ユーザーの行動パターンやニーズを反映した戦略を立てることが容易になります。例えば、通勤時間に広告を出稿するなど、ペルソナの行動に基づいた施策が立てやすくなります。
商品やサービスのマーケティングついて考える時、開発などの背景がわかっていると提供している側の目線に立った考えだけについつい陥りがちです。しかし、マーケティングにおいてより重視すべきはユーザーの視点に立つこと。
「どのような時間帯に広告を出稿すれば目にする可能性が高まるのか?」を考えてみると、通勤時間に電車でニュースアプリに出稿すればペルソナに届くかもしれない、帰宅後にYouTubeやTverなどで動画を楽しむかもしれないなど、より具体的な行動パターンを仮説として立てマーケティングの戦略を策定できるようになるのです。
広告出稿だけではなく、メールマガジンの送信時間などの計画にもペルソナの行動パターンは利用できるのです。どの時間広告出稿が可能なメディアに触れやすく、どの時間は難しいのかといった判断はもちろん、週末の方が妻と相談する時間を持てるので購入に当たっての家族内意思決定がしやすいといった仮説を立てれば週の後半に出稿を増やすといった調整も可能となります。
ペルソナは、自社の商品のどのような部分に惹かれ、またどういった部分に改善を期待しているのか?といったことも具体的なユーザーの声を拾い上げながらペルソナに落とし込むこともできるはずです。
サービスのコンセプトが固まる
ターゲットを絞り過ぎてしまっては多くの打ち上げは望みにくいものですが、万人に愛される商品やサービスを作ろうとしても、なかなか難しいものです。
どのような人に向けて作る商品・サービスなのか?という部分をより明確にすることによって、自ずと正しい商品やサービスのコンセプトを固めることができるようになります。
設定したペルソナがどのようなものを欲しているのか?ということを考えていけば、開発や商品・サービスの改善においてもよりユーザーに愛される商品やサービスを生み出すことが可能となります。
マーケティングのためのペルソナの作り方
漠然としたターゲットからユーザー像を膨らませて作ったペルソナでは、マーケティングに活かすことは難しいです。実際のユーザーデータを参考に、より精度の高いペルソナを設定して、効率のいいマーケティングへと生かしていきましょう。
ターゲットの設定
新規開発する商品やサービスの場合、まずはターゲットの設定からはじまります。例えば「20代未婚男性」をターゲットにしている商品が「60代既婚女性」に爆発的に売れるといったことは起こりませんが、実際には想定していた20代の男性よりも30代や40代の男性ユーザーに購入されるという現象は起こり得るのです。
実際の売上のデータなどから、ターゲットより詳細なペルソナを作ることによって、より現実の顧客近い顧客像へと向けたマーケティングを実現できます。
情報収集
ペルソナを作る上でカギを握るのは、既存顧客の情報です。既存の顧客がどのような人物なのか?という点を知るためには、顧客に対するヒアリングやアンケートなどを通して情報収集を行います。
よりマーケティングに有効なペルソナ作りのためには、以下のような情報が役立ちます。
顧客のプライベート、家族構成など
- 年齢、出身地、最終学歴、家族構成
- スマホやPC、タブレットなどその人が良く利用しているデバイス
- よく利用しているSNSや、職場以外に属しているコミュニティについて
職業に関する情報
- 顧客がどのような役職に就いているのか?
- 勤めている会社の社員数、売上などの規模
- 仕事をする上で役立つスキルや、資格などについて
- 年収はどの程度なのか?
目標・ゴールとするもの
- 達成したいと考えている目標
- 課題と感じているものや、どのようなことにチャレンジしたいと考えているか?
商品やサービスの、購入/利用の動機
- どうして商品の購入に至ったのか?
- 商品の情報を知ったきっかけとなった情報源について
ペルソナに落とし込む
収集した情報を整理し、どのような既存ユーザーがいるのかという点を考えていきます。
既存の顧客情報から、コアターゲットとなるペルソナを描いていきます。1枚のシートとしてまとめ、そのペルソナがどのような人物であるか?ということをわかりやすく共有ができるようにしていきましょう。
業種や商材によっては、ペルソナが1名とは限りません。ユーザーの傾向によっては複数のペルソナへと落とし込み、マーケティングに活用します。
息の長い商材の場合、ペルソナ自体を定期的に見直すことによって顧客の傾向に即したものへとアップデートしていくことも大切です。
ペルソナ作成時の注意点
ペルソナはマーケティングにおいて、非常に有効に使うことが出来るという点はここまででお分かりいただけたかと思います。しかし、気を付けなくてはいけないポイントも存在しますので、ペルソナを作る際にどのようなことに注意すべきか見ていきましょう。
データに基づいた設定
ペルソナは勘や推測だけで作らず、実際のデータをもとに設定することが重要です。顧客データやアンケートなどの実際の声を反映させた人物像を作ることで、現実に即したマーケティングが可能になります。
「この商品を使っている人は、きっとこんな人物だろう」と勘だけで決めつけてしまうのは危険です。もちろん、膨らませる部分はあっても良いのですが、それでペルソナのベースとなる部分が作られてしまうと、担当者の主観や希望、決めつけなどに支配されたペルソナが出来上がってしまい実際のユーザー層からかけ離れたものになってしまう可能性が高まります。
あくまでも、根幹となる部分に関してはきっちりとデータを基に考えていくことが重要。社内に蓄積されている顧客データや、商品のレビューサイトの口コミなどを元にして作るだけではなく、実際に顧客からデータを取る機会が作れるのであれば、アンケートや対面による調査でリアルな声を集めるのも大切です。
ペルソナの過剰設定に注意
複数のペルソナを設定すると、キャンペーンやプロモーションの焦点が定まりにくくなる場合があります。特に、異なるペルソナに対して同一の施策を展開すると効果が薄くなる可能性があるため、特定のペルソナに焦点を絞ることが重要です。
ペルソナを活用する上で多くの人がぶち当たる壁がこの問題です。「一人に絞れない」という問題。もちろんユーザーは画一的ではありませんので、複数のペルソナを作りたくなる気持ちは理解できます。しかし、一つのキャンペーンで複数のペルソナを設定した場合を考えてみてください。
極端な例とはなりますが「東北地方の世界遺産を巡りたい」という50代男性のペルソナと、「仙台のグルメだけを楽しみたい」という20代女性のペルソナを同じ旅行企画のペルソナとして使えるでしょうか?
仮に両者を同一のキャンペーンやプロモーションでカバーしようとすると無理が出てしまうでしょう。無理矢理でも両者同時に成り立つように戦略を考えるのであれば、どちらに対しても中途半端な効果しかなく、必然的に効果が薄まるはずです。
ペルソナは、あくまでも一人をよりディテールにこだわりながら作り上げることが成功の可否を握っています。
ペルソナのSEOにおける活用シーン
ペルソナを基にしたSEO対策では、検索キーワードの選定やコンテンツ作成において、顧客の行動やニーズに合わせた具体的な戦略が立てられます。例えば、マイホーム購入を検討している家族をペルソナに設定し、そのペルソナが使用するであろう検索ワードを想定することで、SEO効果を高めることができます。
ニーズの洗い出しとキーワード選定
自分たちの商品・サービスを探しているペルソナはどのような検索ワードで、どういった意図をもって検索をするのか?ということを仮説として立てる際に非常に便利です。
例えば、埼玉県にある住宅メーカーが草加市内にマイホーム購入を検討中のペルソナを設定した場合物件探しに使うワードはどういったものが考えられるでしょうか。このペルソナは小学生の息子と幼稚園に通う娘がいるという設定で考えてみましょう。
「息子が公立校に通っていて、なるべく転校させたくない」という思いがあるとすれば、「草加市の具体的な地域名+注文住宅、新築住宅、中古住宅または建売り」「〇〇小学校 学区内+注文住宅、新築住宅、中古住宅または建売り」などのワードが考えられるかも知れません。
「息子が通っているのは私立小学校」であればこの検索ワードは変わるでしょう。「草加市+注文住宅、新築住宅、中古住宅または建売り」「草加市内の駅名+注文住宅、新築住宅、中古住宅または建売り」などになるでしょうか。
これらの条件に加えてさらに、息子と娘の部屋を別々に用意するために間取りは4LDK以上、車を持っていれば駐車場や乗っているのが仮に電気自動車であれば屋外充電設備などのオプションも含めて検索する可能性は出てくるはずです。
ほんの少し条件が変わっただけでユーザーが検索に使うキーワードは大きく変わってしまう可能性があります。
具体的にユーザーのどのようなニーズを吸い上げて、どういったキーワードをカバーしてSEO対策を行うかと言う点を考える時、ペルソナの悩みや検索意図などをより具体的なものとして考えることがSEOにおいて非常に有効です。
自社が提供するサービスや販売している商品に関して、ペルソナにはどんなニーズがあり、どのようなワードでWEB検索を行うかを逆算してワード選定に利用していきましょう。
ペルソナまとめ
より有効にペルソナをマーケティングやプロモーションの場面で使うためには、データに裏打ちされた適切な形で一人の人物を丁寧に作り上げていくことが重要です。
ペルソナを作り上げる過程においてはユーザーがどのように感じているか?をより客観的な立場で、俯瞰することによって商品やサービスの問題点や改善点に気付く目線も、チーム全体が養ういい機会になるはずです。
顧客の満足度をより高めるためにも利用できるものとなりますので、是非一度ペルソナ作りに取り組んでみてはいかがでしょうか。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割