投稿日:2021年9月14日 | 最終更新日:2024年1月10日
マーケティングに携わったことのある方なら、「KPI」や「KGI」という言葉を耳にしたことはあるはず。しかし、似通ったことばだったりアルファベット3文字で略させる言葉が多すぎて混乱してしまう人もいるでしょう。
略称で見たときに「G」と「P」のみしが違わないため、混同してしまう人もいらっしゃいます。
ここでは、マーケティングにおいて押さえておくべき「KPI」と「KGI」その意味と違い、良く用いられる指標について紹介します。
KGIとは
KGI(Key Goal Indicator)は日本語では「重要目標達成指数」と言う風に置き換えることができます。個人だけではなく、チームであったり、組織や企業が掲げている目標をめざして活動をする上で、最終的に達成すべき目標をどれだけ達成することができているのかというのを考える際に用いるのがKGIとなります。
遠回しな表現になりましたが、「Goal」という単語が含まれていることからもわかるように最終的に目指すべき、達成すべき「ゴール」というのがKGIであるという理解で間違いはありません。
KPIとは
KPI(Key Performance Indicators)を日本語に置き換えると「重要業績評価指標」となります。これは、KGIを達成するために重要となる中間的な指標です。設定したゴールへと到達するために順調に実績を重ねることができているのか?というプロセスを図る指標となります。
WEBのマーケティングにおいては、ユーザーのセッション数や、バナーのクリック数などKPIとなる指標は無数に存在しますので、KGIを達成するために必要な指標を選択し、KGIから逆算して設定することとなります。
KPIとKGIの違いについて
KGIとKPIはそれぞれ最終目標と、それを達成するための中間目標、中間指標という違いがあります。KGIを達成するために必要な指標がKPI。
KPIを達成することによって、KGIという大きな結果を生むことができるのです。 言わば目標達成のための「過程」を見るための指標がKPIであり、「結果」を見るために存在する指標が「KGI」ということになります。
KPIとKGIの関係性について
あるフィットネスジムが、新規開業店舗に関するKGIを「オープン1年後までに新規会員3,000人獲得」と設定したとします。
KGIに対してKIPは一つではありませんが、まず目標達成に関して言えば人数のKPIというのが存在することとなりますひと月に250人、半年後に1,500人獲得をクリアできていればギリギリKGIを達成することは可能でしょう。
KGIを達成するための施策についてもKPIの設定が可能です。WEB広告配信を行い、オープンから3か月間体験入会を毎月400人獲得や、周辺住宅地へのポスティングによるキャンペーン価格での入会者を半年間で200人獲得、オープンから9か月後からお友達紹介キャンペーンやペア割りキャンペーンなどを展開して、ラスト3か月更に200人の会員獲得につなげるなど施策ごとにKPIを設定して最終的なKGIを達成することができるよう指標をきちんとクリアできているのか?ということを定期的にウォッチすることが重要となります。
KGIという大きな目標を掲げることは、向かうべき方向がきちんと明確になることによって、社員・従業員のモチベーションの向上も望むことができるでしょう。
KPIの設定はなぜ必要なのか?
「KGIさえ明確にできていれば、それに向けて前進あるのみ」といった根性論のような考え方ももちろんあるでしょう。しかし、目標確実に達成するためにはKPIを設定することこそが大切なのです。
KPIがもたらす効果①「より目標を明確なものとすることができる」
大きな目標を漠然と追いかけるのは簡単なことではありません。マラソンランナーも途中の5キロごと10キロごとに設定された目標を一つずつクリアし、ゴールへと近づいている実感を得られるからこそ走ることができるというもの。小さな達成感を積み重ねながら、確実に目標に向けて前進していると感じられることはモチベーションのひとつともなるのです。
KPIがもたらす効果②「達成度合いを俯瞰することにつながる」
KPIが正確に設定されていれば、KGIを達成するために必要な中間目標をきちんと達成できているのか?というプロセスに対する引いた目線での評価をすることにつながります。設定したKPIが本来自分のいるべき現在地だとすれば、そこからどれだけリードできているのか?もしくはビハインドの状況なのかというのを把握することは非常に大切なことです。
目標を「見える化」することにつながるという点にあります。具体的な数値として「可視化」されれば、いつまでにこの目標を達成するのか?目標達成にどれだけ足りていないのか?といったことを客観的な「数値」として意識することにも繋がるため、目標に関わるすべての人が目標達成のための進捗状況を把握することが可能になります。
KPIがもたらす効果③「KGI達成のための軌道修正が可能になる」
無我夢中で目標に向けて走り続けていたら、本来いるべき位置から大きく離され、なかなかこのビハインドを目標時期までに挽回できそうにないといった状況も訪れるでしょう。そんな時、早い段階で気付くことができれば他にどのような手法や施策を投入すれば少しでもそのギャップを埋めることが出来るのか?という対策を練ることができるのです。
また、あまりにKPIから大きく水をあけられているとすれば、そもそも「KGI」がきちんとした根拠にもとづいた設定だったのか?最初からかなり無理な設定だった可能性も出てきます。
後から振り返るとき、設定したKGIの妥当性を検証する上でも重要なデータとなりますので、KPIと実績の乖離データと言うのも重要なものなのです。
目標達成のためにKGIとKPIの設定のコツ
KGIとKPIの設定において、どのようなコツがあるでしょうか。それぞれの便利な目標設定の方法に「SMARTの法則」と呼ばれるものがあります。この法則に則ってKGIやKPIを設定することで、より適切な目標設定が可能となるのです。
KGI、KPI設定に便利な「SMARTの法則」
「SMARTの法則」とは、主にKPI設定に使用されることが多い方法ですが、KGIの設定にも応用できるものとなっています。
- Specific(具体的な)
- Measurable(計測可能な)
- Achievable(達成可能な)
- Relevant(関連した)
- Time-bounded(期限を定めた)
Specific
SMARTの「S」は、「Specific=具体的な」の頭文字を取ったものです。設定する目標についてはより具体的なものである必要があります。目標として明確なものを設定することによって、KPIやKGIに関わる人が共通の目標に向かいやすくなるという利点があります。
Measurable
SMARTの「M」は、「Measurable=計測可能な」の頭文字を取ったものです。目標には定点かつ定期的に客観的な数値などで計測できるということが重要です。目標達成のためにも計測できる数値があればそれによって目標にたいする進捗状況も図ることができるので、計測可能なものであるということも意識しましょう。
Achievable
SMARTの「A」は、「Achievable=達成可能な」の頭文字を取ったものです。どんな目標であっても簡単にクリアできてしまうような目標設定では組織としての成長は望めませんが、「絵に描いた餅」や「机上の空論」と感じてしまうような現状とかけ離れたものが設定されてしまっては、それに関わる人の士気が低下してしまいます。過去の実績や、景気などの要素を鑑みながら、達成できる可能性のある絶妙な高さの目標を定めることが求められます。
Relevant
SMARTの「R」は、「Relevant=関連した」の頭文字を取ったものです。最終的な目標である「KGI」と中間目標として設定される「KPI」、そして目標達成に関わる人々が個人で掲げる目標はすべて関連性がある方がより目標達成に近づきやすくなります。
Time-bounded
SMARTの「T」は、「Time-bounded=期限を定めた」の頭文字を取ったものです。目標達成において「期限」というのは非常に重要なものです。期限を決めなければダラダラと先延ばしになってしまう可能性も高くなります。
KGI/KPIの具体例
KGI/KPIそれぞれについて、ある化粧品メーカーを事例に考えてみましょう。
KGIを「2年後にECサイトの年間売り上げを20%アップする」というものにしたい場合、まずKGIやKPIの根拠となりうる数値などを顧客データや売上のデータから算出する必要があります。
自社のECサイトにおける顧客データや売上データを照合した際、
・その売上の80%以上がリピーターによるものだった
・新規顧客の多くは、既存ユーザーからの紹介また、実店舗のチラシをきっかけにサイトを利用している
・リピーターには、定期的に基礎化粧品を購入するユーザーが多く、パックや美白クリーム等も併せて購入するため、客単価が大きい
このような状況だった場合には、以下のようなKPIが考えられます。
- さらなるリピーターを獲得するべく、既存ユーザーに会員照会のキャンペーンを実施することで、リピーターの数を10%アップさせる
- 実店舗でのチラシを経由して購入したユーザーへプレゼントを実施して、新規顧客の流入数30%アップを目指す
- 新規ユーザーが基礎化粧品を購入した際、サンプルを同梱して次回以降の購入につなげることで、客単価を15%アップする
このように、最終的な目標「KGI」を達成するために、どのようなステップを踏めば良いのか?ということを考えながら「KPI」を設定することが大切です。
WEBマーケティングでよく用いられるKPIの指標
PV(ページビュー)
サイトがどれだけ見られているのか?というのを図る上でPV(Page View)は欠かせないKPIの一つ。広告配信などによってどれだけの集客ができているのか?ということを図る上でももっとも基本となる数値となりますので、PV数の増減というのには注目しておくことが求められます。
UU(ユニークユーザー)数
サイトを訪問したユーザーの数を表すのが、このユニークユーザーという数値となります。ひとりのユーザーが何度同じサイトにアクセスした場合にも、UU数は「1」とカウントされることになりますので、「のべ人数」ではないより正確なユーザー数をカウントすることができるのがこの指標です。
セッション
サイトへと訪問したユーザーが、最終的に離脱していくまでの一連の行動を「セッション」と表現しています。セッション数というのは、そのセッションが何回起こったのかを計測した数値です。セッションという言葉を用いることなく「訪問数」などの表現も存在します。
直帰率
検索や広告から流入してきたユーザーが、そのページからサイト内のほかのページを閲覧をすることなく離脱している割合を直帰率と表現します。この数値が高い場合にはページそのものに魅力を感じられていない可能性も出てきます。広告展開をしているのであれば、ランディングページ自体の見直しや、展開している広告との間に大きなギャップが生まれていないか?といった点を見直してみることも必要かも知れません。
回遊率
直帰率とは逆に、アクセスしたユーザーがその後サイト内の他のページをどれだけ閲覧しているのか?というのを測る指標がこの回遊率です。回遊率の高いサイトであれば、ユーザーの興味関心に対して応えるコンテンツが用意されているサイトであると考えることができます。
CVR(コンバージョンレート、コンバージョン率)
セッションの数から、設定したコンバージョンがどれだけ発生しているのか?というのがこの数値です。商品の購入や、資料請求などサイトによって異なるコンバージョンがどれだけ達成されているのかがわかるのがCVRとなります。
顧客単価
特にECサイトなどにおいて重要な指標となるのがこの顧客単価です。ユーザーが一度に購入する金額というは売上を伸ばすためには必要不可欠です。複数の取り扱い商品がある場合には合わせ買いや、セット割引などの施策によって単価上昇を見込むことができるでしょう。また、単一商材のECサイトの場合には定期購入などの方式を導入することで顧客単価を上げ、より長期的に利用してもらえる仕組みを工夫してみることも大切です。
資料請求数、問い合わせ数
単価が比較的高く、検討期間が長い商材の場合には、資料請求や問い合わせの数をKGIやKPIとして用いる場面も出てきます。より多くの問い合わせを生み出し、見込み顧客から最終的に顧客へと育てていくことが最終的に売上へとつながります。
CPA(顧客獲得単価・成果単価)
CPA(Cost per AcquisitionもしくはCost per Action)は、注文や資料請求といったコンバージョン地点に到達した顧客を1件獲得するためにかかった費用を指す指標です。CPAが低く抑えられている場合には、広告の費用対効果が非常に良い状況だと言うことが可能です。顧客が獲得できていても、1件当たりのCPAが全く見合わない状況であると感じたなら、広告施策に関して大きく転換する必要が出てくる可能性も考えられます。
リピート率
商品を一度購入したユーザーが再び購入した割合を示すのが、この指標です。
売り上げを伸ばすためには新規顧客を開拓するだけではなく、既存顧客が繰り返し購入し、
固定客が増えることによって、売上のベースを形成することでより安定した状況を生み出すことになります。リピート率が非常に高い商品であれば、既存顧客に対する手厚いサービスやキャンペーン展開なども視野に入れても良いでしょう。
メルマガの開封率や、クリック率
メールマガジンを配信するといった場合には効果測定をすることが大切になります。メールの開封率や、掲載されているURLのクリック率などをKPIとして採用することでメールによる施策がどれだけ有効かを測ることが可能になるのです。
配信しているメールのタイトルや、配信時間帯、などパターンを変えて効果を検証することで、配信の最適化を図ることがメルマガの施策では非常に重要となります。メール配信などの機能があるMAツールなどを利用することが可能であれば、より正確な分析が可能となりますので、導入を検討してみることもおすすめです。
KGIとKPIを理解して、正しく運用しよう
KGIやKPIといったマーケティングの用語について考えるとき、企業が掲げるそれらに関わるすべての人々が言葉の意味を理解するだけではなく、どうしてこの目標が設定されているのか?といった部分も正しく理解することが何より大切であると考えられます。
経営層の一方的な願望や思いだけで設定され「到底超えることができない」と現場が感じてしまうような目標は大きな意味をなさないと理解しておきましょう。
KPIに「これまで利用していなかった手法で、新規顧客を20名獲得したい」といった目標を掲げるのであれば、コンテンツマーケティングを実施することで顧客を増やすということももちろん可能となります。
まとめ
KGI/KPIそれぞれについてここまで見てきましたが、「SMARTの法則」などを利用することによって、より具体的かつ適切な目標設定へとつなげていくことができます。
「具体的で」「計測可能」「達成可能」「関連し」「期限を定める」という部分を意識して目標設定をすることが大切です。
KGIという大きな目標を達成するためには、KPIを意識しながら着実に前に進むことが大切です。用いる施策に合わせた適切なKPIの指標を設定することで、状況の分析や効果測定に有効活用することが可能になります。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割