投稿日:2024年8月5日 | 最終更新日:2024年9月19日
企業経営において、社員の行動指針や価値観を明確に示すことが重要視されています。その中で注目を集めているのが「クレド」です。クレドは単なる理念や方針を超え、企業の DNA ともいえる存在です。本記事では、クレドの意味や導入メリット、さらには成功事例まで、わかりやすく解説していきます。クレドを導入することで、あなたの会社はどのように変わるでしょうか?一緒に考えていきましょう。
クレドとは何か?基本的な意味を解説
クレドという言葉を聞いたことはありますか?まずは、クレドの基本的な意味から見ていきましょう。
クレドの定義
クレドとは、ラテン語で「信条」や「約束」を意味する言葉です。企業経営においては、「社員が共有すべき価値観や行動指針」を指します。言わば、会社の「信念」や「誓い」のようなものです。
例えば、『お客様第一』をクレドとして掲げる企業があるとします。この場合、社員は常に「お客様のために何ができるか」を考え、行動することが求められます。まるで、会社全体で「お客様第一」という約束を交わしているようなものですね。
クレドの歴史
クレドの概念は、実は古くから存在していました。中世ヨーロッパの騎士道精神や、日本の武士道にも通じるものがあります。企業経営への本格的な導入は、1980年代のアメリカから始まりました。
当時、日本企業の躍進に危機感を抱いたアメリカ企業が、組織の結束力を高めるためにクレドを導入し始めたのです。これは、武士が『武士道』という行動規範を持っていたように、企業も明確な行動指針を持つべきだという考えから生まれました。
クレドが重視される理由
なぜ、現代の企業経営でクレドが重視されるようになったのでしょうか?それは、企業を取り巻く環境が急速に変化しているからです。
例えば、インターネットの普及により、企業の情報が瞬時に世界中に広まる時代になりました。一人の社員の行動が、企業全体の評判を左右することもあります。このような状況下で、全社員が同じ価値観を共有し、一貫した行動をとることが、これまで以上に重要になっているのです。
企業理念とクレドの違いとは?
クレドと企業理念は、一見似ているように思えますが、実は重要な違いがあります。ここでは、その違いを明確にしていきましょう。
企業理念の役割
企業理念とは、その企業が存在する目的や、社会に対して果たすべき役割を示すものです。言わば、企業の「存在意義」を表現したものと言えるでしょう。
例えば、「世界中の人々の暮らしを豊かにする」といった企業理念があったとします。これは、企業の大きな方向性を示していますが、具体的に社員が日々どのように行動すべきかまでは示していません。
企業理念は、会社の『目的地』を示す地図のようなものと言えます。目的地は分かっても、そこに至る具体的な道筋は示されていないのです。
クレドの役割
一方、クレドは企業理念を実現するための具体的な行動指針を示します。「どのように行動すべきか」という具体的なガイドラインを提供するのです。
先ほどの企業理念の例で言えば、クレドは「常にお客様の立場に立って考える」「新しい価値の創造に挑戦し続ける」といった、より具体的な行動指針となります。
クレドは、企業理念という「目的地」に向かうための「道しるべ」のようなものです。社員はこの道しるべを頼りに、日々の業務の中で判断し、行動することができるのです。
両者の相互関係
企業理念とクレドは、車の両輪のような関係にあります。企業理念が大きな方向性を示し、クレドがそれを実現するための具体的な行動指針を提供するのです。
例えば、「世界中の人々の健康に貢献する」という企業理念がある製薬会社を想像してみてください。この会社のクレドには、「常に最高品質の製品を提供する」「倫理的な研究開発を行う」といった項目が含まれるでしょう。
企業理念とクレドが整合性を持って機能することで、企業は一貫した方向性を保ちながら、日々の業務を進めることができるのです。あなたの会社では、企業理念とクレドがうまく噛み合っていますか?
クレドを導入するメリットとは?
クレドを導入することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主な3つのメリットについて詳しく見ていきます。
従業員のモチベーション向上
クレドの導入は、従業員のモチベーション向上に大きく貢献します。なぜなら、クレドは単なる規則ではなく、会社の価値観や目指すべき姿を示すものだからです。
例えば、「常にお客様の喜びを第一に考える」というクレドがあったとします。これにより、従業員は自分の仕事が直接お客様の喜びにつながっていることを実感できます。自分の仕事の意義を理解することで、モチベーションが高まるのです。
実際に、クレドを導入している企業の従業員満足度調査では、「仕事にやりがいを感じる」と答える従業員の割合が高くなる傾向があります。あなたの会社でも、従業員が仕事の意義を感じられるようなクレドを作ることができるでしょうか?
企業の一貫性を保つ
クレドは、企業全体の一貫性を保つ上で重要な役割を果たします。特に、大企業や多国籍企業にとって、この一貫性は非常に重要です。
例えば、世界中に支店を持つ企業を想像してみてください。各国の文化や慣習が異なる中で、同じ企業としての一貫性を保つのは簡単ではありません。しかし、クレドがあれば、世界中のどの支店でも同じ価値観に基づいて行動することができるのです。
これは、まるで世界中のレストランで同じ味のハンバーガーを提供しているマクドナルドのようなものです。クレドという「レシピ」があることで、どこでも同じ「味」のサービスを提供できるのです。
外部への信頼性向上
クレドの存在は、企業の外部、特に顧客や取引先からの信頼性向上にもつながります。
なぜなら、クレドは企業の価値観や行動指針を明確に示すものだからです。
例えば、「環境保護を最優先する」というクレドを持つ企業があれば、その企業の製品やサービスを選ぶことで、顧客も間接的に環境保護に貢献できると感じるでしょう。
これは、まるで「オーガニック」や「フェアトレード」のラベルが付いた商品を選ぶのと同じです。クレドは、企業の「ラベル」のような役割を果たし、顧客の選択基準の一つになるのです。
あなたの会社のクレドは、顧客や取引先にどのようなメッセージを伝えていますか?それは、信頼につながるものになっているでしょうか?
クレド導入で企業文化はどう変わるのか?
クレドを導入することで、企業文化にはどのような変化が起こるのでしょうか?ここでは、主な3つの変化について詳しく見ていきます。
社内コミュニケーションの向上
クレドの導入は、社内のコミュニケーションを大きく改善します。なぜなら、クレドは共通の言語を提供するからです。
例えば、「常に挑戦し続ける」というクレドがあれば、新しいプロジェクトを提案する際に「これは私たちのクレドに沿った挑戦です」と説明することができます。この共通言語があることで、部署や役職を超えた理解が促進されるのです。
リーダーシップの強化
クレドは、リーダーシップの強化にも大きく貢献します。特に、中間管理職のリーダーシップ発揮に効果的です。
なぜなら、クレドは判断の基準を提供するからです。例えば、「顧客満足度を最優先する」というクレドがあれば、どんな難しい判断にも「顧客満足度を高められるか」という基準で決めることができます。
従業員の行動指針が明確化される
クレドの導入により、従業員の行動指針が明確になります。これは特に、新入社員や異動してきた社員にとって大きな助けとなります。
例えば、「常に学び続ける」というクレドがあれば、新入社員は積極的に勉強会に参加したり、先輩社員に質問したりする行動が推奨されていることが分かります。
クレドを作成する際のポイントと注意点
クレドの重要性は理解できたものの、実際に作成するとなると難しく感じるかもしれません。ここでは、クレド作成時の主なポイントと注意点を3つ紹介します。
シンプルで明確な内容にする
クレドは、社員全員が理解し、日々の業務で実践できるものでなければなりません。そのため、シンプルで明確な内容にすることが重要です。
例えば、「顧客満足度の向上を目指し、常に最高品質の製品とサービスを提供することに努める」というクレドがあったとします。これは正しい内容かもしれませんが、長くて覚えにくいですね。
代わりに、「最高品質で顧客を喜ばせる」というシンプルな表現にすれば、誰もが覚えやすく、実践しやすくなります。
企業理念との整合性を持たせる
クレドは、企業理念を具体化したものです。そのため、企業理念との整合性を保つことが非常に重要です。
例えば、「環境保護に貢献する」という企業理念がある会社で、「コスト削減を最優先する」というクレドを作ってしまったら、矛盾が生じてしまいます。
代わりに、「環境に配慮した製品開発に挑戦する」というクレドであれば、企業理念との整合性が取れています。
現場の意見を反映させる
クレドは、経営陣だけで作るのではなく、現場の社員の意見も取り入れて作成することが重要です。なぜなら、実際にクレドを実践するのは現場の社員だからです。
例えば、営業部門の社員から「顧客との信頼関係構築」が重要だという意見があれば、それをクレドに反映させることで、より実践的なクレドになります。
あなたの会社でクレドを作る際には、どのように社員の意見を集めますか?アンケートを実施したり、ワークショップを開催したりするのも良いアイデアかもしれません。
クレド導入の成功事例を紹介
クレドの重要性や作成のポイントが分かったところで、実際にクレドを成功裏に導入している企業の事例を見てみましょう。ここでは、3つの有名企業のクレドを紹介します。
リッツ・カールトンのクレド
高級ホテルチェーンのリッツ・カールトンは、クレド導入の代表的な成功事例として知られています。彼らのクレドは、「ゴールドスタンダード」と呼ばれる行動指針の中に含まれています。
リッツ・カールトンのクレドの一部を紹介します:
「私たちは、紳士淑女をおもてなしする紳士淑女です」
このシンプルな一文には、高級ホテルとしての品格と、顧客に対する最高のサービスを提供するという決意が込められています。
リッツ・カールトンでは、このクレドを記載したカードを全社員が常に携帯しています。困難な状況に直面したとき、このカードを見ることで適切な判断ができるのです。
リッツ・カールトンのクレドが企業文化に与えた影響
リッツ・カールトンのクレドは、顧客満足度と従業員のエンゲージメントに大きな影響を与えています。顧客満足度を向上させるために、「ワオ・ストーリー」と呼ばれる感動的なサービス事例の共有が行われており、これによりリッツ・カールトンは高い顧客満足度を維持しています。また、毎日のラインナップ(朝礼)でクレドを共有し、話し合うことで従業員の主体性と仕事への満足度が向上しています。
リッツ・カールトンのクレドの進化
リッツ・カールトンのクレドは、時代やニーズの変化に合わせて進化しています。従業員の働きかけにより、クレドの内容が修正されたり、追加されたりすることがあり、これにより企業は常に最新の環境に適応できるクレドを保持しています。
スターバックスのクレド
コーヒーチェーンのスターバックスも、クレドを効果的に活用している企業の一つです。彼らのクレドは「ミッション声明」と呼ばれています。
スターバックスのクレドの一部を紹介します:
「人々の心を豊かで活力あるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
この言葉には、単にコーヒーを提供するだけでなく、お客様の生活に潤いを与え、地域社会に貢献するという企業の使命が表現されています。
スターバックスでは、このクレドを店舗内の目立つ場所に掲示し、社員が常に意識できるよう工夫されています。これにより、日々の業務の中でクレドを意識し、実践することができるのです。
スターバックスのクレドが企業文化に与えた影響
スターバックスのクレドは、従業員の自主性とブランドイメージの向上に貢献しています。例えば、クレドに基づき、従業員は顧客へのメッセージをカップに書くなど、自発的なサービス向上活動を行うことで顧客満足度を高めています。また、コーヒーハウス文化を大切にするクレドにより、スターバックスは単なるコーヒーチェーン以上の価値を提供し、ブランドイメージを強化しています。
スターバックスのクレドの進化
スターバックスのクレドは、社会的責任や環境問題に対する取り組みを反映して進化しています。創業当初は主にコーヒーの品質とサービスに焦点が当てられていましたが、現在は持続可能性や地域社会への貢献も重要な要素となっています。さらに、ロゴも時代に応じて進化し、より普遍的なデザインへと変わっています。
ユニクロのクレド
アパレル企業のユニクロも、独自のクレドを持っています。彼らのクレドは「UNIQLO WAY」と呼ばれ、企業理念や行動規範が含まれています。
ユニクロのクレドの一部を紹介します:
「お客様のために新しい価値を創造し、世界中の人々の生活をより豊かにする」
この言葉には、革新的な商品開発を通じて顧客満足を追求し、グローバルに事業を展開するという企業の方向性が示されています。
ユニクロでは、新入社員研修からベテラン社員の研修まで、あらゆる場面でこのクレドを活用しています。これにより、全社員が同じ方向を向いて業務に取り組むことができるのです。
これらの成功事例から、クレドが単なる掛け声ではなく、企業文化を形成し、業績向上にも寄与する重要なツールであることがわかります。
ユニクロのクレドが企業文化に与えた影響
ユニクロのクレド「UNIQLO WAY」は、グローバル展開と革新的な商品開発に大きく貢献しています。統一された企業文化により、世界中で一貫したサービスを提供し、グローバル市場での成功に繋がっています。また、「お客様のために新しい価値を創造する」というクレドに基づいて、継続的に革新的な商品開発を進め、顧客の期待に応えています。
ユニクロのクレドの進化
ユニクロのクレドは、グローバル展開に伴い進化してきました。当初は日本市場に特化していましたが、現在では世界中の従業員が共有できる普遍的な内容となっています。また、デジタル化やサステナビリティといった現代の価値観も取り入れることで、クレドは進化し続けています。
クレド導入の基本的な手順
クレドを効果的に導入するためには、しっかりとした手順を踏むことが重要です。ここでは、クレド導入の基本的なステップを紹介します。
1. プロジェクトチームの編成
まず、クレド作成のためのプロジェクトチームを編成します。このチームには、経営陣だけでなく、管理職や一般社員も含めることが重要です。各部署から代表者を選び、さまざまな視点を取り入れることで、全社に浸透しやすいクレドを作成できます。
2. 目的とスケジュールの設定
プロジェクトチームで、クレド導入の目的や具体的なスケジュールを決定します。「何のために」「どのように」「いつまでに」作成するのかを明確にし、全員が共通の目標を持つことが成功の鍵となります。
3. 経営陣と従業員へのヒアリング
経営陣から企業理念や方針についてヒアリングを行い、同時に従業員にもアンケートやインタビューを通じて企業に対する考えや価値観を収集します。この段階で経営層と従業員の意見をバランスよく反映させることが大切です。
4. クレドの文章化
ヒアリング結果を基に、クレドを具体的な文章として作成します。短く、誰もが理解しやすい言葉を選び、クレドの本質を簡潔に表現することがポイントです。
5. フィードバックの収集
作成したクレド案を経営陣や従業員に確認してもらい、フィードバックを収集します。このプロセスにより、全員が納得できる内容に仕上げることができます。
6. クレドの最終化と承認
フィードバックを反映させ、クレドを最終的な形にまとめます。経営陣の承認を得た後、正式なクレドとして全社に導入される準備が整います。
7. 全社への発表と浸透活動
完成したクレドを全社に発表し、浸透活動を開始します。クレドカードの配布や、朝礼での唱和など、さまざまな形で従業員にクレドを定着させるための施策を行います。
8. 定期的な見直しと改善
クレド導入後も、定期的にその効果を評価し、必要に応じて改善を行います。社会情勢や企業の変化に応じてクレドを柔軟に更新し続けることが、長期的な成功に繋がります。
これらの手順は、大企業だけでなく中小企業にも適用可能です。企業の規模や状況に応じて各ステップを調整しながら進めることが、成功への鍵となるでしょう。クレドの導入は短期間で成果が出るものではありませんが、丁寧に進めることで企業文化を強化し、従業員のモチベーションを高めることができます。
まとめ:クレドとは企業理念に基づく成功の鍵
ここまで、クレドについて詳しく見てきました。クレドとは、企業理念を具体化した行動指針であり、社員の日々の判断や行動の基準となるものです。単なるスローガンではなく、企業文化を形成し、業績向上にも寄与する重要なツールなのです。
適切に設計され、全社員に浸透したクレドは、企業の成長と成功の鍵となるでしょう。あなたの会社の「クレド」は、どんな未来を指し示していますか?
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割