投稿日:2024年1月23日 | 最終更新日:2024年10月12日
インナーブランディング(Inner Branding)とは、別名インターナルブランディング(Internal Branding)とも呼ばれるもので、主に企業の内部に対して行われるブランディングのことを指します。対象となるターゲットは経営層、マネジメント層などを含む社員全体となります。
その企業が持つブランドの価値や、理念などに関する正しい理解を広め、社員一人一人に共感してもらうことによって、企業全体に広げていくことがインナーブランディングの大きな目的となります。
ブランディングとは?詳しい記事はこちら↓
インナーブランディングとは何か?その意味を解説
インナーブランディングとは、企業の理念やブランド価値を社内に浸透させ、社員の行動や意識を変えていく活動のことです。外部に向けたブランディング活動だけでなく、内部からブランドを強化していく取り組みとして注目されています。
社員に企業理念を浸透させるための取り組み
インナーブランディングの核心は、企業理念を社員一人ひとりに深く理解してもらうことです。単に理念を覚えるだけでなく、その意味や重要性を心から納得し、日々の業務に反映させることが目標です。例えば、「お客様第一」という理念であれば、単なるスローガンとして掲げるだけでなく、どのような行動が「お客様第一」につながるのかを社員全員で考え、実践していくのです。
企業のブランド価値を内部から高める活動
ブランド価値は、外部からの評価だけでなく、内部の力によっても大きく左右されます。インナーブランディングは、社員がブランドの代表者として自覚を持ち、行動することで、企業の価値を内側から高めていく活動です。例えば、高級ホテルのスタッフが、ホテルのブランドにふさわしい振る舞いや言葉遣いを身につけることで、顧客の体験価値を高め、結果としてブランド全体の価値向上につながるのです。
インナーブランディングの重要性
インナーブランディングの持つ大きな目的の一つは、「社内における価値観の共有」です。インナーブランディングを実施することによって、自社のサービスや商品がどのように顧客や社会に役立つのか、その価値観が社内に広く浸透し、社員一人ひとりがその良さを多くの人に伝えられるようになります。
こうした社員は「エバンジェリスト(伝道師)」とも呼ばれ、まずは社内にエバンジェリストを生み出すことが、ブランディングにおいて重要な役割を果たします。
アウターブランディングとの違い
アウターブランディング(外部ブランディング)は、顧客や株主、取引先などの外部を対象にした活動です。ターゲット層が異なり、外部向けには商品やサービスの魅力を伝えることに重点が置かれます。それに対して、インナーブランディングは、社員や従業員を対象にして、企業の理念や価値観を社内に浸透させることが目的です。
インナーブランディングとアウターブランディングは車の両輪のような関係で、どちらか一方だけでは効果が半減します。インナーブランディングが成功すれば、それがアウターブランディングにも良い影響を与え、結果的に企業全体のブランド価値が強化されるのです。
アウターブランディングとは?詳しい記事はこちら↓
アウターブランディングとは?意味やインナーブランディングとの違いについて解説!
インナーブランディングのメリット
インナーブランディングの成功は、社内への限定的な効果だと思いがちですが、アウターブランディングにもメリットを生み出す点があります。そんなインナーブランディングが生み出す効果をさまざまな角度から見ていきましょう。
従業員満足度の向上・モチベーションの向上
商品やサービスを扱う企業においては「社員が最も身近なファンであること」が大切。従業員が商品やサービスに対して特段の興味も愛着もない企業と、商品に対する愛情・愛着に溢れている企業とでは、明らかに後者の方がすべてにおいて物事が上手く運ぶということは容易に想像いただけると思います。
「愛社精神」という言葉は一見古めかしく感じられるかもしれませんが、商品・サービスに対する愛着は、どのような企業にとっても必要となるのです。
愛着のあるものだからこそ、社員は熱意を持って商品やサービスを語ることができます。そしてその「熱意」が無ければ社外の人の心を打つことはなかなか難しいもの。愛着のある商品、そして愛着のある企業だからこそ従業員のモチベーションは向上し、ブランド全体・会社としての魅力の向上、そしてそこで働くことに誇りを感じる従業員はより高い満足度を感じることへとつながっていきます。
顧客満足度の向上
インナーブランディングによって、社員が「会社全体をより発展させるために」という意識を持つことが出来れば、サービスを提供する接客業であれば顧客に対する接し方、商品を生産する企業であればクオリティや機能性、デザイン性を高めようといった意識が自然と働くようになります。
「少しでも給与水準を上げたい」や、「上司から怒られるから」といったマイナスなきっかけではなく、自ら積極的にクオリティを上げていこうとする行動が起これば、それは直接顧客サイドの満足度の向上にもつながるようになるのです。
一見、両者は異なるように思えますが、インナーブランディングとアウターブランディングは密接に関連しています。
インナーブランディングにおける成功が、そのままアウターブランディングの成功と対になっている点はきちんと理解しておくことも重要です。
従業員定着率の向上
従業員満足度やモチベーションの向上とも大きく関連しますが、愛着のある会社であればより長く勤めたいと考えるのが従業員の心情というものです。インナーブランディングに成功すれば、従業員の定着率というのは自ずと向上します。長期間勤務する人材が多くなれば、業務に関する技術の熟練や、ノウハウの蓄積を進めることが可能に。新たに加わる人材に対する教育という面でも充実した内容を提供できるため、会社全体の生産性の向上というメリットも生まれます。
採用活動に有利となる
社員が勤めていて満足度の高い企業であれば、知り合いの優秀な人材が就職・転職を考えている場合には自分の会社を紹介したいといった流れも生まれてきます。自然と良い人材が集まる可能性が向上するという点でも、採用活動に有利につながります。
また、近年では転職・就職する際に企業で働く人材の声というのは容易に検索が可能となっています。現役社員や、すでに退職した社員の声などが多数掲載されているサイトは、会員登録さえすれば詳細な口コミ情報まで読めてしまうため、会社の内情をある程度応募者・求職者は把握することが出来るのです。
インナーブランディングが出来ていて、社員の満足度が向上していればこのようなサイトで悪評を広げられるといったリスクも低下し、採用活動においてプラスにも働きます。
インナーブランディングの代表的な社内施策例
インナーブランディングには、社内向けメディアの作成やイベントの実施などさまざまな手法が存在します。ここでは、施策例からどのような効果があるかを紹介します。
社内報・ポスター
インナーブランディングの一つの手法としてあるのが「社内報」です。特に社員の人数が多い場合には、誰がどの部署でどのような仕事をしているのか?といったことを全員が把握できない規模だったり、直接関係していない業務に関しての知識が薄いといった傾向もみられます。そのような場合には、定期的に社内報を発行して企業やブランドとしての動向、今後についてなどを社員向けに広く啓蒙するということも有効です。
また、ポスターは社外向けのものではなくあくまでも社内向けのものであるため外部などに依頼せず簡単に作成が可能となります。社内に掲出することで多くの社員の目に触れますので、会社全体の士気向上にもつながります。
従業員向けWebサイト
社内報やポスターといった従来の形での施策に加えて、会社の情報が一か所に集約された社員/従業員向けポータルサイトといったものもインナーブランディングの一つの有効な手段と言えます。
全社的な情報の共有がしやすくなるだけではなく、紙ベースとのインナーブランディングメディアと比較しても情報のアップデートが容易ですので、一度システムを構築してしまえば、ランニングコストも低く抑えることができるでしょう。
社内イベント・表彰
新型コロナウイルスの感染拡大などもあり社内イベントを実施する企業はそこまで多くない状況ではありますが、社員総会をはじめ、社員旅行などを通じて社員同士の親交を深めていくきっかけづくりも大切です。自社の状況を深く理解してもらうとともに、社内表彰などもおこなうことによって、より社員のモチベーション向上にもつながることになります。
社内研修・セミナーの充実
社員に対し、より会社全体の業務やサービスについて理解を深めるという意味で、社内研修やセミナーを充実させるというのは非常に重要なことなことです。
またこういった場面で役に立つのが、企業出版でもあります。都度資料を作成するといったことをしなくても、経営者の考え方や企業としてのあるべき姿がまとまっている書籍があれば、それを事前に配布しセミナーの教科書として読んでもらうことによって会社としての根幹部分に関して大きく説明を省略することも可能です。
先に書籍を読んでもらうことで、社員の理解を深めやすいだけではなく、より研修やセミナーを充実したものにすることができるのです。
リーダーシップの育成
インナーブランディングを全社に浸透させるためには、各部門や現場のリーダーが果たす役割が非常に重要です。リーダー自身がインナーブランディングの意義を理解し、率先して実践することで、組織全体へとその影響が広がりやすくなります。リーダーが理念を体現し、周囲に良い影響を与えることで、インナーブランディングの効果を一層高めることができます。
具体的には、以下のような取り組みがリーダーシップ育成に効果的です。
- リーダー向けの特別研修を実施し、理念をより深く理解させる
- 企業理念に基づいたリーダーシップ評価制度を導入する
- 部門を超えたリーダー同士の交流を促進し、相互学習の場を提供する
- 成功事例を共有し、社内で表彰する制度を設ける
これらの施策を通じて、リーダーシップを育成することで、インナーブランディングの効果を組織全体で最大化することができます。リーダーシップの育成により、社員全体の意識改革が進み、企業のブランド価値がさらに強化されるでしょう。
インナーブランディングを導入する手順を解説
インナーブランディングを効果的に導入するためには、計画的なアプローチが欠かせません。ここでは、インナーブランディングを社内に浸透させるための具体的な手順を、段階ごとに解説していきます。
現状の課題を把握する
まず初めに行うべきは、自社の現状を正確に把握することです。社員の意識や内部コミュニケーションの状況、顧客からのフィードバックなど、さまざまな視点から現状を分析し、課題を明確にします。具体的には、以下の方法が有効です。
1. 社員アンケートを実施し、理念やブランドの浸透度を調査
2. 部門長やマネジメント層へのヒアリングを実施
3. 顧客満足度調査の結果を分析
4. 社内コミュニケーションツールの活用状況を確認
これらの手法を通じて、「理念が社員に浸透していない」「部門間の連携が弱い」などの具体的な課題を浮き彫りにします。
企業理念やブランドの再定義を行う
現状分析の結果、企業理念やブランドの見直しが必要な場合、再定義を行います。時代の変化や市場のニーズに合わせて、理念やブランドの表現を刷新することも重要です。再定義のプロセスには、次のようなステップを取り入れると効果的です。
1. 経営層やリーダー層を交えたワークショップを開催
2. 社員から意見を募り、現場の声を反映
3. 必要に応じて外部コンサルタントを活用
4. 新しい理念やブランドステートメントを策定
全社員が共感できる、明確で時代に即した企業理念を再構築することで、インナーブランディングの基盤を強化します。
具体的な施策の策定と実行
企業理念やブランドの再定義が完了したら、それを社内に浸透させるための具体的な施策を策定します。自社の状況に合わせて、最適な施策を選び、実行計画を立てることが重要です。施策の進め方としては、以下が効果的です。
1. プロジェクトチームを結成し、担当者を決定
2. 短期・中期・長期の目標を設定し、進捗を管理
3. 各施策に予算と担当者を割り当て
4. 実行スケジュールを作成し、段階的に施策を展開
施策の実行にあたっては、小規模なパイロットプロジェクトを開始し、効果を確認しながら本格展開を進めることをおすすめします。
定期的な評価と改善を行う
インナーブランディングは一度の取り組みで終わるものではなく、継続的な評価と改善が不可欠です。定期的に効果を測定し、必要に応じて施策を見直しながら進めていくことで、組織全体への影響を最大化します。評価と改善のためには、以下のステップが有効です。
1. KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的に測定
2. 社員の意識変化を把握するための調査を実施
3. 成功事例や課題を社内で共有し、改善を促進
4. 施策の見直しと新たな取り組みの検討
これらのサイクルを繰り返すことで、インナーブランディングの効果を持続させ、組織全体の成長を後押しすることができます。
インナーブランディングのまとめ
ここまでご覧いただいたように、組織強化や採用活動における合理化というものがインナーブランディングによって実現することができるのです。多くの企業にとってまずは社内にむけたブランディングに取り組むということがとても重要であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
良質なWEBコンテンツを発信することが社外のマーケティングのみならず、社内のインナーブランディングにも寄与することにもなるのです。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割