投稿日:2025年3月14日 | 最終更新日:2025年3月16日
「ファネル」という言葉は、マーケティングやセールスに携わる方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。ただし、その意味を正確に理解し、実務でしっかり活用できている人は意外に少ないかもしれません。本稿では、「ファネル」活用の意義や具体的な分析方法、そしてコンテンツマーケティングの視点を交えながら解説します。
ファネルとは?
「ファネル(Funnel)」は英語で「漏斗」を意味する単語です。理科の実験などで使う上部が広く、下部が細い形状を想像すると分かりやすいでしょう。この形に例えて、多くの潜在ユーザー(上部)から最終的な成約(下部)に至るまでのプロセスをマーケティングで捉える際に、「ファネル」という概念を使います。
例えば、多くのユーザーがまず広告を見て認知し、そのうち一部が製品情報を調べ、さらに限られたユーザーが購入や問い合わせなどのコンバージョンに至ります。このように、上部が大きく、下部に向かうほど絞り込まれていくプロセスを示すのがファネルです。
ファネルという視点を導入すると、
- どの段階でユーザーが離脱しているか
- その離脱を減らすにはどうすればよいか
といった改善ポイントが分かりやすくなります。
また、最近ではSNSでの拡散やリピーター形成といった行動も重要視され、ファネルの形も多様化しています。次章では、代表的なファネルの種類を見ていきましょう。
マーケティングに用いられているファネルの種類
ファネルには複数のモデルがあり、目的や商材によってどれを使うかが変わることがあります。特に近年は、SNSや口コミサイトを通じてユーザー同士が情報を共有するケースが増え、一方向的だったファネルがより複雑化・多層化しているのが特徴です。ここでは代表的なパーチェスファネル、インフルエンスファネル、そしてそれらを組み合わせたダブルファネルを紹介します。
パーチェスファネル

パーチェスファネル(Purchase Funnel)は、従来からあるAIDMAのフレームワークをファネル化したものです。次の5段階から成り立ちます。
- Attention(注意・認知)
- Interest(興味・関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(購買行動)
広告を見て初めて商品を知り、興味や欲求を抱き、記憶に残ってから最終的に購入するという、消費者の典型的な購買プロセスを表します。多くのユーザーが「認知」段階にいるが、最後の「行動」に至るのは一部のみという図式です。
より深く記憶に焼き付いたユーザーが最終的に購入や利用といった具体的なアクションを起こすようになる。もっともシンプルなファネルと言えるでしょう。
インフルエンスファネル

インフルエンスファネル(Influence Funnel)は、商品購入後のユーザー行動に焦点を当てた逆三角形型のファネル。以下のようなプロセスを想定しています。
- 商品を購入(またはサービスを利用)
- 継続利用し、愛着・好意を感じる
- SNSや口コミサイトなどで情報を共有・発信
- 発信された情報が新たな見込み客の購買行動を誘発
つまり、「購入してもらった後」の顧客がブランドの“応援団”として自発的に動いてくれる仕組みを可視化したのがインフルエンスファネルです。SNSの普及で、顧客が自然発生的に商品情報を拡散するケースが増え、企業にとって極めて重要な指標となりました。
商品を購入または、サービスを利用したユーザーはそれを「継続」します。その中でその商品に対する愛着を抱き、商品のファンつまり「好きになる」のです。そして、SNSや口コミを通じてその良さを「共有・紹介したい」と感じるようになり、最終的には「情報を発信する」という行動に移行していきます。
ダブルファネル

パーチェスファネル(購入前のプロセス)とインフルエンスファネル(購入後の拡散プロセス)をつなげたモデルがダブルファネルです。
- 上段ファネル:潜在顧客から購入行動に至るまで
- 下段ファネル:購入したユーザーがブランドを発信し、新たな潜在顧客を呼び込む
SNSやコミュニティサイトを介して情報が連鎖し、ファンがファンを呼ぶ循環モデルが強化されています。特にD2C(Direct to Consumer)ブランドなどでは、熱狂的ファンがSNSで拡散し、次々と新しい顧客が生まれる仕組みをダブルファネルで説明できるでしょう。
芸能人や著名なインフルエンサーによって紹介されることから始まり、それを直接フォローしている人間が再び情報発信へのファネルへと情報を流していく。2次フォロワーへと情報は波及していき、3次、4次へと波のように情報が伝播していくのです。3次4次へと情報が伝わっている時点では、起点から分岐した複数の情報源からユーザーへと情報が到達している可能性もあり、より説得力や信憑性、流行していると感じる度合いも大きくなっている可能性があります。
SNSが発達する前まではアナログで情報が伝わることが多く、商品やサービスに関してはマスメディアなどによる影響力が大きかったわけですが、直接そして身近な存在から豊富な情報を得ることが容易になった現代においてはダブルファネルを重視することも大切なのです。
ファネルを活用した、マーケティング施策の分析
ファネル分析の要は、「ユーザーがどの段階でどれだけ離脱しているか」を把握することです。たとえば郵送DMで新商品を案内する施策を例に、ファネル分析を考えてみましょう。
- DM送付:リスト1,000件にダイレクトメールを送る
- アクセス:DMを見たうち400人がサイトを訪問
- 資料請求:サイト訪問のうち20人が資料請求
- 成約:最終的に8人が商品を購入
このプロセスで、
- ①→②:1,000件中400件アクセス=600人が離脱
- ②→③:400人中20人資料請求=380人が離脱
- ③→④:20人中8人が購入=12人が離脱
これにより、どのステップの離脱率が高いかが可視化されます。DMによるサイト誘導が弱いならDM文面やアプローチ先を見直す、資料請求率が低いならランディングページを改善する…といった施策を打ちやすくなります。
この施策をファネルとした場合、最も離脱率の高かったダイレクトメールの発送、さらにアクセスしたユーザーが資料請求する段階で離脱したユーザーが多かったという点を見直していく必要があるとなるでしょう。
「ダイレクトメールからサイトへのアクセス」という、アナログからデジタルへの移行の段階で離脱しているユーザーが多いのであれば、郵送のダイレクトメールで実施していた部分に関してはリストとして保有しているメールアドレスへのメルマガ発信という形に変えるという案に変えてみれば、郵送や印刷にかかっていたコストも圧縮できるというのも選択肢でしょう。
また郵送したリストからアクセスしてくれたユーザーの傾向を分析し、よりアクセスしてくれそうな割合の高いユーザーへと新たな郵送リストを抽出した上で施策を再度実施して、離脱するユーザーに変化があるのか?という点を分析してみるというのも改善案になると思われます。
②→③の段階で離脱してしまったユーザーに対する施策としては、ランディングページの訴求ポイントの見直し、CTAの内容や配置などの見直し、資料請求フォームの項目に関する検討などをおこなうことで、ここの数字の改善につながる可能性も見込めるでしょう。
最近では、MAツール(マーケティングオートメーション)やWeb解析ツールでファネルをビジュアル化し、各段階の転換率をリアルタイムで確認する企業も増えています。
ファネルを活用することによるメリット

ファネル分析を導入する最大の利点は、ユーザーの行動プロセスを可視化し、改善ポイントを明確にすることです。以下、代表的なメリットを2つ紹介します。
ユーザーが離脱しやすいポイントが可視化できる
先述のDM例のように、ユーザーが「どこで最も多く離脱しているのか」を定量的に把握できます。サイトアクセス→資料請求の段階で離脱率が高いなら、ランディングページやフォームのUX、オファー内容に課題があるかもしれません。
施策精度の向上につながる
離脱率の高いステップが把握できると、具体的な対策を講じられます。
- DMの文言やデザインを刷新
- ランディングページをABテスト
- 資料請求フォームを短く・簡単に といった具合に、一点突破型の改善が可能。加えて、複数回の施策を繰り返すことでペルソナ設定の精度やターゲティング能力を高め、全体的なROIを向上させられます。
また、コンテンツマーケティングと組み合わせることで、見込み顧客を中長期的に育成(リードナーチャリング)し、ファネルの底に多く到達してもらう仕組みづくりも有効。たとえば、ホワイトペーパーやセミナー(ウェビナー)資料ダウンロードを通じて、より濃い見込み顧客をファネル下部へ誘導する、といった運用が可能です。
ファネルはBtoCに活用できる?
ファネルモデルはBtoB中心に使われる印象が強いですが、BtoCにも応用可能です。
ただし、BtoCの商品やサービスでは、購買意思決定プロセスがより直感的かつスピーディーになる場合も多く、一人のユーザーが複数チャネルを行き来するケースが多いため、「ファネル」が単純に一直線で終わらないこともしばしばです。
そのため、
- 検索エンジン→SNS→友人口コミ→再び公式サイト
- Instagram広告→YouTubeレビュー→オフライン店舗で実物確認→ECで購入
のように複雑な行動が想定されます。BtoC向けファネル分析では、マルチチャネルを意識した形で離脱ポイントと再接触機会を把握し、顧客の情報収集→検討→購買プロセスを俯瞰することが重要。SNSインフルエンサーの影響も考慮した「ダブルファネル」的なアプローチが一層有効です。
もちろん、BtoCに全く使えないということではありませんが、よりBtoBに向いている分析の手法だということだけは頭に置いた状況で活用することが必要です。
ファネル分析に関するまとめ
ファネルは、漏斗状にユーザーが徐々に絞り込まれていくモデルとして、マーケティング施策やコンテンツマーケティングで大いに役立ちます。特にBtoBでは定番の分析手法ですが、BtoCでもSNSや口コミを視野に入れればダブルファネルやマルチチャネル対応が求められるでしょう。
- パーチェスファネル: 認知から購買に至るまでのプロセス(AIDMAなど)
- インフルエンスファネル: 購入後の愛着から情報発信へと至るプロセス
- ダブルファネル: 購入前・購入後を組み合わせた包括的モデル
- 分析効果: 離脱段階の可視化、施策のピンポイント改善、ペルソナ精度向上
いずれのファネルでも鍵となるのは、定量的な計測と継続的な改善です。既存のマーケティングオートメーションやWeb解析ツールとファネルを連動させることで、より高い効果が期待できるでしょう。
カッティングエッジ株式会社では、マーケティング戦略の設計からコンテンツ制作、ファネル分析による改善提案まで一貫したサポートを提供しています。「ファネル分析を導入して施策の精度を高めたい」「コンテンツマーケティングと連動させて継続的にリードを育成したい」など、お悩みがありましたらお気軽にご相談ください。
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カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は2,500社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割