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企業出版とは?そのメリット・デメリットをわかりやすく解説

投稿日:2022年6月20日 | 最終更新日:2024年10月9日

マーケティングやブランディングの一環として注目されているのが「企業出版」。コマーシャルやWEB広告ではなく「書籍」を広告や宣伝の有効なツールとして活用するのはどういうことなのか?わかりやすく解説していきます。

そもそも企業出版とは


企業出版は、企業が抱えるマーケティングやブランディング、採用などの課題を、書籍を通じて解決することを指します。単なる本作りではなく、企業の知識やノウハウを活用し、戦略的に世に問うコミュニケーション手段として活用されます。

企業出版の場合、制作費は企業側が負担します。出版社のプロの編集者が経営者や社員に取材し、企画を立案します。書籍の執筆は、企業代表や専門知識を持つ内部の人が行う場合もありますが、口述筆記形式で、プロのライターが文章をまとめることも可能です。したがって、文章を書くのが苦手な場合でも、書籍として完成させることができます。

また、発行部数が多くなくても、出版社が流通に携わるため、全国の書店で書籍が販売されることもあります。

企業出版の本質と定義

企業出版は、企業の知識や経験を凝縮して発信することで、企業価値の向上や顧客とのコミュニケーションを図る手段です。通常の商業出版とは異なり、売上を目的とするのではなく、主に企業のブランド力を強化し、信頼性を高めるために行われます。新規顧客の獲得や、既存顧客との深い関係性の構築にも寄与します。

具体的には、企業の歴史や理念を紹介する書籍や、業界の専門知識をまとめた解説書、または顧客向けのハウツー本などが企業出版の代表例です。これらの書籍を通じて、企業は自社の強みや専門性を効果的にアピールすることができます。

自費出版と企業出版の違い

「自費出版」とは、主に個人が主体となって自分自身がそれまでしてきた活動や自身が経験してきたことを書籍としてまとめ出版することを言います。書籍出版にかかる費用は著者自身が負担し、書籍の企画などの段階からほぼすべての決定権を著者が持つ自由度の高い出版と言えます。

個人の詩集や写真集などを趣味の集大成として自費出版されるような方もいますが著者が製作費を負担するため、あまり部数を多くすることはできず自費出版の場合には概ね100部前後の部数というのが基本になります。一般の書店への流通・販売ルートに乗ることはほぼありませんので、販売というよりは手渡しで記念に配布したり、直接本人が販売するというのが「自費出版」なのです。

商業出版と自費出版の違い

「商業出版」が企業出版や自費出版と大きく異なる点としては、まず書籍の企画・著者の選定、制作費の負担までそのすべてを出版社が担うということです。
作家が出版する小説、芸能人によるコラム・エッセー、漫画などごく一般的に「出版」と言われてまず最初にイメージするそれのほとんどは「商業出版」です。利益を生まなくてはいけないので書籍の売り上げ部数を伸ばすことができる著者が自ずと選ばれることになります。ビジネス書を大手出版社が出すのであれば、成功のノウハウが確実にある大企業や注目されている新興企業の経営者などに絞られてきます。

企業出版や自費出版と比較すると、出版社が主導権を握って行われるため書籍の内容などに関する自由度は下がってしまうという傾向になります。販売の方法や流通に関しても出版社が決定することになりますので、発行部数は多く一般の書店やネットの書籍販売サイトで販売される可能性は、企業出版や自費出版と比べても規模が大きいものになります。

出版社が企画を起ち上げて制作費を負担するため、企業出版のように自社で目的やメッセージを設定することは難しくなります。また流通経路なども出版社が中心となり決定します。企業出版に比べると、自由度は低いといえるでしょう。発行部数は企業出版よりも多い傾向があります。

それぞれの出版形式の違いまとめ


企業出版は、商業出版や自費出版とは異なる特徴を持っています。以下のポイントで明確な違いが見られます。

  1. 目的の違い
    o 商業出版: 書籍の販売による利益獲得が主な目的です。
    o 自費出版: 個人の想いを形にすることが主な目的であり、販売はあまり重視されません。
    o 企業出版: 企業のブランド力向上や顧客獲得、信頼性の強化など、企業の戦略的な目的を果たすための手段です。
  2. 費用負担
    o 商業出版: すべての費用を出版社が負担します。
    o 自費出版: 著者自身が費用を負担します。
    o 企業出版: 企業が費用を負担し、内容や目的に基づいた書籍が制作されます。
  3. 内容の自由度
    o 商業出版: 出版社のマーケティングや編集方針により、内容の自由度は制限されることがあります。
    o 自費出版: 著者が完全に自由に内容を決定できます。
    o 企業出版: 企業の意向が反映されますが、読者や市場ニーズを考慮して内容を調整する場合が多く、戦略的なアプローチが必要です。
  4. 配布・販売方法
    o 商業出版: 全国の書店やオンライン書店で広く販売されます。
    o 自費出版: 著者自身が手渡しで配布することが多く、一般書店での販売はほぼありません。
    o 企業出版: 顧客やビジネスパートナーに無料配布するほか、限定的な書店での販売やオンラインでの提供など、多様な方法が採用されます。

企業出版の主な活用方法

 
企業出版は、多様な目的で活用されています。以下に、主な活用方法をご紹介します。

  1. ブランディング強化
    企業の理念や歴史、ビジョンを伝える書籍を出版し、企業イメージを向上させます。書籍を通じて、企業の価値観やストーリーを広く発信することで、ブランド力を高めることができます。
  2. 専門性のアピール
    業界に関する専門知識や独自のノウハウをまとめた書籍を出版することで、企業の専門性をアピールします。これにより、業界内での信頼性や権威を確立し、競争優位性を強化することができます。
  3. 顧客教育
    製品やサービスの効果的な活用方法を詳しく解説した書籍を顧客に提供することで、顧客の理解を深め、満足度を向上させます。結果として、リピート率や顧客ロイヤルティを高めることが期待されます。
  4. リード獲得
    無料の小冊子やeブックを提供することで、見込み客の連絡先を獲得することができます。このようなコンテンツを通じて、潜在顧客と接触し、将来的な顧客獲得につなげる手段としても有効です。
  5. 社員教育
    企業理念や業務マニュアルをまとめた書籍を作成し、社員教育に活用します。これにより、新入社員や現職の社員に一貫したメッセージや指導を行うことができ、社内での理解を深める効果が期待できます。
  6. CSR活動の一環
    社会貢献活動や環境への取り組みをまとめた報告書を出版し、企業の社会的責任(CSR)をアピールします。これにより、企業の社会的意義や持続可能な取り組みを強調し、ステークホルダーとの信頼関係を築くことが可能です。

これらの活用方法は、企業の規模や業種、目的に応じて柔軟に選択・組み合わせることができます。重要なのは、企業の戦略的目標と出版内容を一致させることです。

あなたの企業では、どのような活用方法が最も効果的でしょうか?自社の強みや課題を踏まえ、最適な企業出版の形を考えてみてください。

企業出版することのメリット


企業出版によって制作した書籍は、どのように活用することで、どういったメリットを生み出すことができるのでしょうか?具体的な場面から考えていきます。

・自社のより広いターゲットに対するPRや、新規顧客の創出

書籍が店頭に並ぶことによって、それまでの営業チャンネルとは全くことなる顧客との接点の創出というチャンスが広がることになります。

全国の書店に地域に流通されれば、限定された地域でおこなっているビジネスではなかなか出会うことが出来なかったクライアントと出会う可能性は自ずと高まるのです。

・深度のある関係性の構築

書籍を手に取ったことがきっかけで見込み顧客となった場合、著者自身の考え方などをある程度理解している状態からスタートできるというのは非常に大きな強みとなります。

広告経由のクライアントの場合には、自社のバックグラウンドや考え方を事細かに説明する必要がありますが、書籍をすでに読んでいる時点でその必要はありません。ある程度深度のある状態から関係性を築けるのは大きなポイントです。

・書籍の持つ信頼性をプラス

書店に並ぶような書籍は、誰にでも簡単に出版できるものではありません。

「書籍を出版している」という実績は、クライアントに好印象を与えるだけではなく、就職・転職を考えている求職者に対しても良い影響をもたらします。

「書籍を出版できるほどのノウハウがある企業である」「経営者の書籍を読んで考え方に強く共感できる」など企業イメージのアップに繋がるのが企業出版の魅力の一つです。

・社員教育ツールとして導入

代表の考え方や、自社の持つ強みなどを都度新入社員に説明し、周知していくことは骨の折れる作業です。そのたびにパワーポイントなどを用意することは、情報のアップデートはしやすいかも知れませんが、毎回情報を更新するのも効率的ではありません。

基本的なことが書籍として1冊にまとまっていれば、書籍を社員に手渡してもらうことで強力な社員教育ルーツとなります。

・形として残るものである

テレビやラジオにCMを出稿したり、ランディングページを作って広告を展開するという方法も広告・宣伝においては有力な方法です。そして、効果の瞬間風速としては大きなものになる可能性も十分あります。しかし広告費を投下しなくなった瞬間、その効果は徐々に低減していくことになります。CMの動画や音声は、出演者との契約期間内であればYouTubeにアップしたり、ページそのものはWEB上に残すことは可能ですがそれ自体の広告効果というのは限定的なものに変わっていきます。

一方、書籍の場合手に取れるものとして残すことができます。書店の店頭に永遠に置かれ続けるというわけではありませんが、医師が執筆した書籍であればクリニックの待合室に置くことによって患者の目に触れるなど形に残るからこそ生まれる長期的なユーザーとの接触機会というものも創出できます。

・長期的な広告効果が期待できるから

企業出版は、一度の投資で長期的な効果が期待できる点が大きな特徴です。通常の広告とは異なり、書籍は長期間にわたり読者の手元に残り、必要に応じて繰り返し参照されます。

主なメリットとしては以下の点が挙げられます:

  1. 一度の投資で継続的な露出が可能であること
  2. 時間の経過とともに書籍自体の信頼性が増し、読者に好印象を与える傾向があること
  3. 口コミやSNSを通じて、自然な形での情報拡散が期待できること
  4. 書店や図書館での継続的な露出による、長期的な認知向上効果

例えば、料理器具メーカーがレシピ本を出版した場合、その本は読者の家庭に長期間保管され、何度も使用されることで、ブランドの認知度と好感度が自然と高まります。書籍の価値は一過性の広告とは異なり、長期的な影響を持つため、安定したブランディング効果が期待できるのです。

企業出版することのデメリット


ここまでは企業出版の多くのメリットについて考えてきました。当然メリットがあればデメリットも存在しています。企業出版を考える上で、押さえておいた方がいいデメリットとはどのようなものでしょうか?

・自社の持つ情報が広く知れ渡る可能性

すべてオープンになっている情報であれば問題無いかも知れませんが、自社で持つ他社にはないノウハウが出版物に記載されていれば、広く世間に周知されてしまいます。競合他社からサービスや商品に関する模倣がされてしまう可能性もありますので、「このポイントは絶対に口外してはならない」というポイントだけは押さえておきましょう。

・他の広告・宣伝より費用が高額になる可能性はある

「企業出版」の場合、制作に掛かる費用の負担は出版を依頼する企業側になります。

効果の面から単純な比較はできませんが、例えばWEBサイトの制作よりは当然高額になる可能性があるという点ではデメリットと呼べるかも知れません。しかし、LPなどを作成して継続的に広告出稿をした場合には、広告・宣伝のためにWEBに投下する金額もそれなりに膨れ上がる可能性もあるため、企業出版は十分に広告・宣伝・ブランディングのツールとしての選択肢となり得るはずです。

・制作に時間がかかる

WEBサイトやCMなどにももちろんそれ相応の制作期間が必要になります。しかし、企業出版の場合、取材・企画立案だけで最低でも1カ月程度、実際の記事の執筆や編集・校正などのフローを経ると短い業者に依頼したとしても最短でも3か月以上はかかります。企業側がよりこだわって時間をかけて作ろうと思えばできてしまうものでもありますので、場合によっては半年以上の時間が必要になることもあります。

「すぐに出版したい!」と直感的に考えたとしても、実際に出版できるまでにはタイムラグが発生してしまう点は理解しておきましょう。

・情報更新が難しいから

一度出版された書籍の内容を更新することは非常に難しく、特に紙の書籍の場合は、情報の修正や追加はほぼ不可能です。

主な問題点

  1. 最新情報の反映が難しい
  2. 誤りや不適切な情報の訂正が困難
  3. 新しい製品やサービスの情報を追加できない

このため、急速に変化する業界や頻繁に新製品を発表する企業にとっては、常に最新情報を提供するのが難しくなることがあります。

・PRの範囲が限られるから

企業出版は、主に書籍を手に取る人やその存在を知る人に限られるため、PRの範囲が限定される傾向があります。

制約の例

  1. 書店での露出が限られる(特に専門書の場合)
  2. 一般的な広告媒体と比べて即時性に欠ける
  3. デジタルマーケティングと比べてリーチ数の測定が困難

こうした制約は、迅速かつ広範な情報発信を求める企業にとっては不利に働く場合があります。

企業出版が注目される理由とは?

近年、企業出版が注目を集める背景には、ビジネス環境の変化や消費者行動の多様化が挙げられます。企業出版は単なる書籍の制作にとどまらず、マーケティングやブランディングの新たな手段として位置づけられています。ここでは、企業出版が注目される主な理由を解説します。

従来の広告手法に代わる効果的な集客ツール


従来の広告手法、例えばテレビCMや新聞広告の効果が低下している中で、企業出版は新しい集客手段として有効性が高まっています。書籍を通じて、より深い情報提供が可能であり、企業の強みや理念を長期間にわたって伝えることができます。

企業出版が効果的な理由:

  1. 詳細な情報を提供できる: 30秒のCMや1ページの広告では伝えきれない深い内容を、書籍を通じて丁寧に伝えることができる。
  2. 長期的な効果が期待できる: 書籍は長い間手元に残り、繰り返し参照されるため、長期的なプロモーション効果がある。
  3. 書籍の信頼性: 書籍そのものが持つ信頼性により、企業や製品の信頼感が向上する。
  4. コストパフォーマンス: 一度の投資で長期的な露出が可能なため、長期的に見た場合、従来の広告手法よりも費用対効果が高いことが多い。

例えば、高級腕時計ブランドが、時計の歴史や製品の技術について詳細に紹介する書籍を出版することで、テレビCMでは伝えきれない製品の価値や企業理念を効果的に伝えることができます。

デジタル広告との差別化が可能


デジタル広告が飽和状態にある今、企業出版はオフラインでの差別化を図る手段としても強力です。手に取って読める書籍は、デジタルメディアに対する信頼性と存在感の違いを際立たせます。

デジタル広告との差異:

  1. 物理的な存在感: 書籍という実体があることで、より強い印象を残すことができる。
  2. 他の情報に埋もれにくい: ノイズの多いデジタル広告とは異なり、書籍は情報を集中して伝えることができる。
  3. 信頼性の違い: デジタル広告に比べて、書籍は信頼性が高いとされ、消費者の信頼を得やすい。
  4. ピンポイントなターゲティング: 書店やイベントなど特定の場所で展開することで、ターゲット層に対して的確にアプローチできる。

例えば、オーガニック食品メーカーが健康に関する書籍を出版し、自然食品店で展開することで、ターゲット層に直接アプローチし、ブランド価値を高めることができます。

書籍を通じた専門性のアピール


企業出版は、自社の専門性や独自のノウハウを効果的にアピールする方法としても注目されています。業界内での知識や経験を体系的に紹介することで、専門的なポジションを確立し、信頼性を高めることが可能です。

専門性アピールの利点:

  1. 深い知識を体系的に提示できる: 業界や製品に関する知識を深く掘り下げて伝えることができる。
  2. 問題解決のプロセスを共有: 独自の視点やアプローチを詳しく説明することで、企業の思考プロセスを伝えられる。
  3. 具体的な事例紹介: 成功事例や失敗事例を通じて、読者にリアルな経験を提供できる。
  4. 業界でのポジション強化: 書籍を通じて、自社の専門性や立ち位置をより明確に示すことができる。

例えば、AI開発企業が最新技術の応用事例をまとめた書籍を出版することで、技術力の高さや業界での先進性をアピールし、信頼を得ることができます。

企業出版が注目される理由は、これらのポイントに加え、情報過多の時代における「選ばれる情報源」としての価値が大きいです。信頼性が高く、長期的に効果を発揮する企業出版は、今後ますます重要性を増すでしょう。

企業出版まとめ

ここまで見てきたようにメリット・デメリット両面存在する企業出版ですが、他社と同じような広告や宣伝、ブランディングの戦略を選ぶのではなく、差別化を図る意味では非常に良い選択肢だと言えます。

書籍特有の良さを活かしながら、WEBによるプロモーションと巧みに組み合わせることによって大きなシナジーを生み出すことにもつながるでしょう。これから企業出版を検討するのであれば、ノウハウが蓄積されている専門的な出版社に相談してみるのが良いかもしれません。

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