投稿日:2022年6月20日 | 最終更新日:2024年9月24日
そもそもPODってどんな出版方法?
PODとは「Print On Demand(プリントオンデマンド)」の頭文字を取った言葉です。オンデマンド、つまりユーザーから要望があった際に、サービスを提供する形式のビジネスであり、プリントオンデマンドは発注があったらその都度印刷を行うという形式の出版方法となっています。
Amazon(アマゾン)の「著者向けPODサービス」を利用することでどなたでも出版ができるようになりました。
POD出版の強みとは?
POD出版は通常の出版とは違ってどのような強みがあるのでしょうか?他の出版方法とも比較しながら見ていきます。
・初期費用を抑えられる
通常の出版ではまず「どの程度販売できるか?」という部分を考えて、「まず初版として何部印刷するのか?」を決定していきます。この時のコストは商業出版であれば出版社が負担してくれますが、企業出版や自費出版の場合には企業または著者自身が負担することとなりますので、部数が多ければ多いほど初期費用が必要となってくるのです。
POD出版の場合、そもそも初版としてまとめて印刷することが必要ないため、印刷にかかる費用を抑えることができるほか、制作した書籍の保管費用などもかからないのです。
・在庫を抱える必要がない
前述したようにPOD以外の出版方法においては最小ロットでも数十部~100部単位程度から現物の書籍を印刷することが必要となります。それに対してPOD出版の場合には、購入を希望する方から注文が入ってから都度印刷をするため、倉庫に実際の書籍として在庫を置いておく必要がありません。
「在庫を抱えること」はこれまでの出版において当然のことではありましたが、大きなリスクとなるものでもありました。出版における大きな弱点の一つを解決したのがPODという方式だと言えるのです。
・改訂作業がより簡単
紙の書籍として在庫を持っている場合には、改訂にも手間がかかります。初版の在庫が捌けて、重版をする場合にはそのタイミングで内容を変えることも可能ですが、その場合にも「改訂版をどれだけの部数刷るのか?」を考えた上で、ある程度固まった部数の印刷を掛ける必要があります。
PODの場合には、原稿データを修正し改訂版としてPODを提供しているプラットフォームへアップロードすれば次に注文が入った際にはもう新しいデータのものが印刷されます。より最新の情報を掲載しておきたいと考える場合などには非常に便利なシステムと言えるのです。
・「絶版」という考え方が無くなる
一般的な出版方法においては、それ以上を印刷をしなくなる「絶版」という考えがあります。絶版となってしまえば、もうその時点で世の中に存在している印刷済みの本が売り切れたら、それ以上世の中に流通することはなくなってしまいます。あとは、その本を持つ人が他人に譲渡したり、転売などのみということになります。
PODの場合は、プラットフォームが無くならない限り半永久的に出版を継続していくことが可能です。「欲しい」と思う人が存在する限り、書籍を提供することができるという点は画期的な出版方法です。
・電子書籍のデータを流用することができる
印刷費用や在庫のリスクを考えた時、「まずは試しにまずは電子書籍で出版を」と考える人は少なくありません。電子書籍のデータがあれば、多少の修正を加えればPOD用の印刷データに転用することも可能です。電子書籍として世に出すことを選択し、紙の書籍とすることに二の足を踏んでしまっていた人でも、PODなら気軽に入ることが可能なのです。
・決済処理や発送の対応が必要ない
PODに関しては業者にデータを納品すれば、その時点で完了。顧客が購入時にする決済に関する対応や、発送の処理などに対応する必要がありません。紙の書籍でありながらすべてワンストップで対応してもらえてしまうというのは出版する側にとっては煩雑な作業を省くことも出来ますので、大きな魅力の一つとも言えます。
POD出版におけるデメリット
ここまで見てきたように既存の出版方法と比べると初期費用がかなり抑えられたり、在庫を持つ必要が無いことも含めてメリットは非常に大きいのがPOD出版です。では逆に、「どのようなデメリットがあるのか?」を紹介します。
・大部数の場合には向かない
印刷の際にかかる費用について考えれば、PODは一定です。1部印刷しても、10,000部印刷しても仮に印刷費1,200円だとしたら、それは変わりません。
一般的に紙の書籍を印刷する際には、部数が多ければ多いほど印刷費用が抑えられるという利点もあります。一気に大部数を刷ってある程度のリスクを覚悟しておけば、それだけ1冊あたりの利益が大きくなるというスケールメリットの仕組みはPODには存在しないことは理解しておきましょう。
・カラーページの数に応じて価格が高くなる
印刷費用がモノクロとカラーとでは異なり、カラーの方が当然高くなります。そうなると、販売価格にも影響することになりますので、写真集のようにフルカラーでの印刷が必要な場合には、それだけ価格に転嫁する形となってしまいます。
・印刷のクオリティはどうしても下がる
商業印刷や企業出版・自費出版など費用をかける場合の印刷方式は基本的にインクを使って印刷するオフセット印刷である場合が多いです。一方、POD出版においてはトナーを使った方式で印刷する場合が多いため、印刷のクオリティという面から考えると必然的に下がってしまうということは理解しておきましょう。ハイクオリティで印刷にも事細かにこだわりたいという場合には、PODは向かない可能性があります。
・ハードカバーにすることはできない
PODの場合、ペーパーバック形式が基本です。表紙も裏表紙も紙製となります。ハードカバーで、装丁によりこだわりたいといったことを考える場合には向かないかも知れません。帯を掛けることも出来ないため、帯を付けたい場合には最初から帯が付いているように見える形に表紙・裏表紙のデザインをする必要があります。
手元に置いておくものだけはハードカバーにしたいという場合には、販売するものはPODとしてごく小ロットで上製本を作ってくれるメーカーに自分で保存しておく分を制作してもらうという方法も可能です。
・基本的に書店には並ばない
PODの場合は紙でできた書籍が無い以上、現実の書店には並びません。「自分が作った本が書店の店頭に並ぶ」ということを第一の目標としていたり、そのことに対して大きなステータスを感じているのであれば、その願いはPODだけではなかなか叶えることができません。ただし、PODでも猛烈に売上がある書籍であれば、その実績から商業出版への道が開けていく可能性はゼロでは無いでしょう。
・ISBNコードがつかないものが多い
国際標準図書番号(ISBN)は、商業出版など一般に流通される書籍に付与される独自の番号です。PODの場合はこのISBNが付けられなかったり、付けることができても有料オプションで提供されている場合もあります。
このISBNが付いていないと、例えば「近隣の図書館に寄贈したい」と考えた際、寄贈条件として「ISBNが必要」という場合もありますので、ISBNが必要な場合にはオプションなどで付けることができるか?を含めてPODの業者を選ぶ際の条件として考えておく必要があります。
PODに向いている書籍、向いていない書籍
POD出版の特性を見てきた上で、どのような書籍が向いていて反対にどのような書籍はPODには向かないのでしょうか。
・よりPODに向くのは「更新性の高い書籍」
数か月単位で情報をアップデートする必要があるなど、最新の情報を小まめに反映していきたい場合には通常の出版では対応しづらくなります。データの修正によって、内容を更新できるPODの方が向いていると言えます。
また、世界情勢の激烈な変化が起こった場合など「緊急で出版したいことがある」となった際のスピードという意味ではPOD出版が向いている場合もあるでしょう。
・PODに向かないのは「こだわりを形にしたい書籍」
色の再現性や印刷のクオリティ・装丁にこだわりたいという場合には、やはりPODは向きません。また、フルカラーの場合には印刷にかかる費用が大きくなるという性質を考えると特に写真集や絵本などにはあまり向かないという結論になります。しかし、POD出版できないわけではありませんので、クオリティやこだわりについてある程度許容できる場合には、選択肢として考えても良いでしょう。
POD出版で成功するための5つの黄金ルール
POD出版には多くのメリットがありますが、成功するためにはいくつかのポイントを押さえることが重要です。以下の5つのルールを意識して取り組むことで、より効果的なPOD出版が可能になるでしょう。
1. 読者を魅了する高品質なコンテンツ作り
POD出版では、内容の質が何よりも重要です。読者はオンラインでの評価や口コミを確認してから本を購入する傾向が強いため、高品質なコンテンツを提供することが成功の鍵となります。
具体的には以下の方法がおすすめです:
- 徹底的な市場調査を行い、読者のニーズを把握する
- 独自の視点や経験を盛り込み、他の本にはない価値を提供する
- プロの編集者やライターと協力し、読みやすく魅力的な文章を作成する
さらに、クオリティを高めるための戦略として、過去にベストセラーの出版に関わった経験者の知見を活用する方法も効果的です。このアプローチには以下のメリットがあります:
- そのジャンルでの「勝ち筋」を熟知した専門家のアドバイスが得られる
- プロの視点から、内容の構成や表現方法について具体的な改善提案が期待できる
- 出版業界の最新トレンドや読者ニーズについての洞察を得られる
確かに、こうした専門家に依頼する場合、ある程度の初期投資が必要になる可能性があります。しかし、POD出版の特性上、従来の企業出版と比べて全体的なコストは抑えられます。これは、初期の印刷部数を最小限に抑えられることや、在庫リスクが低いことなどが理由です。
2. ニッチ市場を狙ったターゲット設定
POD出版の最大の利点は、少部数でも採算が取れること。大手出版社が手を出さないようなニッチな市場を狙うことで、独自のポジションを確立できます。
例えば:
- 「左利きのゴルファーのためのスイング改善法」
- 「猫と暮らす一人暮らしの20代女性向けインテリアガイド」
- 「プログラマーのための瞑想(マインドフルネス)入門」
このように具体的で狭いターゲットを設定することで、読者のニーズにピンポイントで応えることができます。
3. SNSを活用した効果的なマーケティング戦略
POD出版では、本を作るだけでなく、いかに読者に届けるかが重要です。SNSマーケティングを活用して、継続的に新しい読者へアプローチすることが成功への近道となります。
特にSNSのフォロワーが多い方にとって、POD出版は非常に有効な戦略となります。一般的に「売れない」「売りにくい」と言われるPOD出版でも、すでに多くのファンを抱えているSNS影響力者なら、比較的容易に販売数を伸ばすことができるでしょう。
具体的な戦略として以下のようなものが挙げられます:
- Instagramで本の一部を紹介する「#今日の一文」シリーズを始める
- TwitterやFacebookで著者の日常や本の執筆過程を共有する
- YouTubeで本の内容に関連する動画コンテンツを配信する
- SNSでの事前予約キャンペーンを実施し、初動の販売数を確保する
- フォロワーとの直接対話を通じて、本の内容や価値をより深く伝える
SNSに力を入れている方にとって、POD出版は自身のブランドをさらに強化し、フォロワーとの関係性を深める絶好の機会となります。
また、SNSでの反応を見ながら内容を微調整できるPOD出版の特性は、より読者のニーズに合った本作りを可能にします。
このように、SNSとPOD出版を効果的に組み合わせることで、従来の出版モデルでは難しかった柔軟で対話的な本作りが実現できるのです。
4. 読者心理を考慮した慎重な価格設定
POD出版では印刷コストが高くなりがちですが、適切な価格設定が重要です。
価格設定のコツは:
- 同じジャンルの他の本の価格を調査する
- 印刷コストと希望利益を考慮しつつ、読者が「お得」と感じる価格を設定する
- 電子書籍版も同時に出版し、価格に幅を持たせる
5. プロ並みの品質管理と一流の仕上がり
POD出版だからといって、品質を疎かにしてはいけません。むしろ、大手出版社の本と同等以上の品質を目指すべきです。
品質管理のポイントは:
- プロのデザイナーに表紙デザインを依頼する
- 複数の校正者に内容をチェックしてもらう
- 印刷サンプルを取り寄せ、実際の仕上がりを確認する
POD出版で成功しやすい5大ジャンル
POD出版は、従来の出版方法では難しかったジャンルや内容でも挑戦できる可能性を秘めています。特に以下の5つのジャンルは、POD出版との相性が抜群です。
1. 学術書・専門書:知識の深さを武器に
学術書や専門書は、POD出版の特性を最大限に活かせるジャンルです。需要は限られているが単価を高く設定でき、内容の専門性が高いため大手出版社が手を出しにくいという特徴があります。
2. ニッチな分野の本:マニアックな需要の掘り起こし
一般的な出版社では採算が取れないようなニッチな分野こそ、POD出版の真骨頂です。例えば、「レトロゲーム攻略完全ガイド」や「希少切手収集マニュアル」などが考えられます。
3. 自己啓発書・ビジネス書:経験を知恵に変換!
自己啓発書やビジネス書は、著者の専門知識やノウハウを直接読者に伝えられるジャンルです。このジャンルのPOD出版には、以下のような大きな利点があります:
- 著者のブランディング強化
- セミナーや講演会との連動性
- 既存コンテンツの有効活用
特に注目したいのが、既存コンテンツの活用方法です。
例えば:
- 過去に開催したセミナーの資料や動画教材を書籍化する
- オンラインコースの内容を再構成して本にまとめる
- ブログやニュースレターの人気記事をベースに書籍を作成する
これらの方法を使えば、すでに価値が証明されたコンテンツを効率的に書籍化できます。さらに、こうして作成した書籍を使って新たなセミナーや講座を企画することも可能です。つまり、コンテンツの循環を生み出し、ビジネスの相乗効果を高められるのです。
続いて
- 書籍の一部をサンプルとしてオンライン公開し、セミナーへの集客に活用する
- セミナー参加者限定の特別版を作成し、付加価値を高める
- 定期的に内容を更新し、常に最新の情報を読者に提供する
このように、自己啓発書・ビジネス書のPOD出版は、単なる本の出版にとどまらず、著者のビジネス全体を活性化させる強力なツールとなり得るのです。過去の積み上げてきたコンテンツを効果的にリユースし、新たな価値を生み出す好循環を作り出すことができるでしょう。
4. 絶版本の復活と人気著書のリニューアル
需要はあるものの、在庫リスクが高いために絶版になってしまった本。そんな本こそ、POD出版で蘇らせるチャンスです。過去に商業出版でリリースしたベストセラーを現代風にアレンジするのも効果的な戦略です。
具体的には以下のような方法が考えられます:
- 図解やイラストを追加して、内容をより分かりやすく更新する
- 現代の事例や最新のデータを盛り込み、内容を刷新する
- デジタル時代に合わせて、関連するオンラインコンテンツへの導線を追加する
このアプローチには以下のメリットがあります:
- すでに知名度のある書籍なので、以前の読者に再度購入いただける可能性が高い
- POD出版の特性を活かし、内容の更新性を高く保てる
- リード獲得の導線を作りやすく、マーケティング戦略と連動させやすい
例えば、キャンペーンページのURLをすぐに変更できるため、メールマーケティングを行っている方はステップメールの組み直しも容易です。これにより、既存の読者との関係性を深めつつ、新たな読者層の開拓も可能になります。
ただし、著作権の問題には十分注意が必要です。特に他者の著作物を復刻する場合は、必ず権利者の許諾を得るようにしましょう。自身の過去作品を復刻する場合でも、出版社との契約内容を確認することが重要です。
POD出版の柔軟性を活かし、古典的な名作に新たな命を吹き込むことで、読者に新鮮な価値を提供できるでしょう。
5. 写真集・イラスト集:視覚的魅力を最大限に
POD出版の印刷技術の進歩により、写真集やイラスト集といった視覚的な要素が強い本も高品質で制作できるようになりました。SNSとの相性が良く、宣伝効果が高いのも特徴です。
これらのジャンルは、POD出版の特性を活かしやすく、成功の可能性が高いと言えます。自分の強みや興味のある分野と照らし合わせて、最適なジャンルを選択することが重要です。
POD出版まとめ
商業出版は出版社が制作費用を持つためハードルが高く、企業出版や自費出版の場合には費用負担が大きいためそう簡単に出版をすることが出来ないと悩む方も多くいらっしゃるでしょう。そんな時に有力な候補となり得るのがPOD出版です。
「費用を捻出するのはなかなか難しいけれど、紙の書籍を出しているという実績は、ブランディングやアピールポイントのためにも作っておきたい」そんな場合には、PODで一度のテストマーケティングも兼ねてPOD出版と電子書籍を併用してみて、反響が大きければ企業出版やブランディング出版というステップに進むという方法も良いのではないでしょうか。
カッティングエッジ株式会社 代表取締役 竹田 四郎
WEBコンサルタント、SEOコンサルタント。WEBサイトの自然検索の最大化を得意とする。実績社数は3,000社を超える。
営業会社で苦労した経験より反響営業のモデルを得意とし、その理論を基に顧客を成功に導く。WEBサイトやキーワードの調査、分析、設計、ディレクションを得意とする。上級ウェブ解析士、提案型ウェブアナリスト、GAIQの資格を保有する。著書:コンテンツマーケティングは設計が9割